日本共産党

2003年8月12日(火)「しんぶん赤旗」

年金積立金の危険な株投資

累積赤字は6兆円に

国民には給付削減、保険料引き上げ


 国民が支払う年金の保険料が株式などに投資され、これまでに六兆円もの損失を出しました。「年金給付の削減、保険料引き上げ」という改悪をすすめる一方で、運用の失敗で大切な年金積立金を目減りさせる政府のやり方に怒りが高まっています。(秋野幸子記者)

 「収入は年金だけの生活なのに、四月からは国保も介護保険料も値上がりした。年金は下がったのに…。これでは病気をしても、病院代を払えるかどうか」。神奈川県のある年金生活者の不安の声です。

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 政府は今年四月から、お年寄りの受け取る年金額を、物価の下落に応じて0・9%削減しました。すでに給付を受けている人の年金額を減らすのは初めてのことです。来年度も同じように物価下落分の削減を実施する方針です。

 一方で、株価下落のなか年金積立金を株式などで運用し、二〇〇二年度には三兆六百八億円もの赤字を生みました。過去最悪の年間赤字額です。〇二年度末までの累積赤字は六兆円を超えました。(グラフ)

 政府がお年寄りに押しつけた年金引き下げの総額は三千七百億円(〇三年度)。一年間の運用による損失でその八倍以上の積立金が消え、年金財政に大穴をあけたことになります。

株式運用する積立金を増額

 国民が支払う公的年金(国民年金と厚生年金)の保険料は、年金の支払いなどに使い、残りが積立金となります。その額は合わせて約百四十七兆円(〇二年度末)です。

 このうち三十一兆六千億円を、厚労省が所管する年金資金運用基金が、厚労相が定める基本方針にそって国内外の株式や債券に投資しています。

 厚労省は、積立金を市場で運用するのは「運用収益を将来の年金給付にあてることで、保険料負担を軽減するため」だとしています。しかし、利益をあげるどころか、逆に巨額の赤字を出しているのですから、見直しが必要となっています。

 ところが〇三年度の運用計画では、市場で運用する積立金を十二兆一千億円も増額しました。運用失敗の危険をいっそう拡大させています。

民間金融に巨額の手数料

 積立金の実際の運用は民間の金融機関(信託銀行や投資顧問)に委託され、巨額の運用手数料が流れています。

 〇二年度の手数料は百七十六億円(表参照)。運用で損失をだした金融機関にも支払われました。株式での運用を始めた一九八六年以降の手数料は、合計で四千六百三十億円にものぼります。

 また、巨額の損失を計上しているにもかかわらず、厚労省から天下りした年金資金運用基金の近藤純五郎理事長(前厚生労働事務次官)の給与は、月額百十万円にもなります。

 年金資金の株式での運用は、旧厚生省所管の年金福祉事業団によって始まりました。損失を積み重ね、二〇〇〇年までの十五年間で一兆七千億円もの赤字を生みました。

 しかし政府と自民、公明などの与党は、これを見直すどころか、二〇〇〇年の年金改悪で、積立金の市場での運用をいっそう拡大しました。年金積立金を大蔵省資金運用部(当時)に全額預け、年金福祉事業団がその一部を借り入れて運用するというそれまでのやり方をやめ、厚労省が直接、積立金を運用する方式を導入したのです。

 日本共産党は、「マネーゲームに参加して、失敗していくら積立金を失っても、結局だれも責任を取らないことになる」(小池晃議員、二〇〇〇年三月の参院国民福祉委員会)と、損失拡大の危険を指摘して反対しました。しかし政府は、「(株式や債券に)分散投資することによってより安全で有利な運用が可能になる」(丹羽雄哉厚相=自民、同委員会)と“有利な運用”を約束しました。自民、公明など与党は、この年金改悪を強行採決で押し通しました。

 しかし運用で大損しても、「一兆円損したから責任を取れといわれても、なかなか取りようがない」(坂口力厚労相=公明、今年二月六日の衆院予算委員会)と開き直り、政府の責任を棚上げにしています。

巨額の積立金見直すべき

 百四十七兆円にのぼる年金積立金は、年金給付など支出総額の約五年分にあたります。イギリスが二カ月分、ドイツが一カ月分など、欧米諸国の積立金が数カ月から一年分程度であるのと比べて、突出しています。

 日本共産党は、積立金の危険な株式運用はただちにやめるべきだと主張。巨額の年金積立金を計画的にとりくずして、保険料の軽減や年金の給付にあてるよう提案しています。

運用受託の金融機関には手数料ががっぽり(上位10社、02年度)


  金融機関名    運用手数料(億円)

 住友信託銀行      24.4

 三菱信託銀行      22.0

 UFJ信託銀行     15.2

 三井アセット信託銀行  10.2

 興銀第一ライフ・アセットマネジメント

              9.2

 シティトラスト信託銀行  8.0

 みずほ信託銀行      7.0

 ドイチェ信託銀行     6.7

 野村アセットマネジメント 6.5

 三井住友アセットマネジメント

              6.1

  :        :

 48社合計      176.4


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