2003年8月5日(火)「しんぶん赤旗」
先の通常国会で日本共産党は、国民の運動と結んで、くらしを応援する政治への転換を求める論陣をはってきました。サービス残業、長時間労働の根絶を求める問題では他党の追随を許さない追及を展開。行政も動かし、企業の未払い賃金の支払いが相次ぐなど、大きな成果をあげています。
「ちょっと異常だ。よく体がもつ」。答弁に立った小泉首相も驚きました。一月二十三日、衆院予算委員会。日本共産党の山口富男議員が、トヨタの労働者の長時間労働を取り上げたときのことです。最大で年間三千六百五十時間もの労働を強いられている実態を、豊田労働基準監督署の調査をもとに告発。「世界のトヨタの非常識」として政府の指導を求めました。この質問のテレビ中継を見た人びとからは、「息子の過労死が心配。よくとりあげてくれた」など、大きな反響が寄せられました。
波紋は早くも同月二十九日、トヨタ本社に及びます。生産ラインを止めての緊急集会で、「不適切な勤務時間管理の撲滅をはかる」ことが全社的に徹底されたのです。労働者から「前代未聞」と驚きの声があがりました。四月にはトヨタ本社の社員用玄関にカードリーダーと呼ばれる出退勤の記録機が導入され、「五分間でも残業代がつくようになった」と喜ばれています。年内にはすべての工場に導入されます。(「しんぶん赤旗」日曜版八月三日号で詳報)
自動車メーカーのスズキが、サービス残業を隠すためにパソコン操作時刻が記録されないようシステムを改ざんしたことを国会で暴露したのも日本共産党でした。厚生労働省が改めて調査に入り、スズキはその後、〇二年十一月から〇三年一月までの三カ月分の未払い残業代、約七千万円を支払いました。
サラ金最大手「武富士」が過去二年間のサービス残業代、約三十五億円を支払ったことも七月二十八日明らかに。武富士の過重ノルマによる深刻な労働実態については、四月十八日の衆院財務金融委員会で佐々木憲昭議員が生々しく告発し、厚労省に厳正な処罰を要求しました。
日本共産党はサービス残業の問題を、一九七六年五月に沓脱タケ子参院議員が女性労働者のサービス残業について告発して以来、国政の場で一貫して取り上げてきました。サービス残業は労働基準法に違反する犯罪でその根絶は労働者の命と健康を守り、家族の団らんを回復させるからです。消費や雇用の拡大にも結びつき、日本経済の再生にもつながります。
昨年十二月には、雇用政策「無法なリストラや解雇から雇用と人権を守り、安心して働くことができるルールの確立を」を発表。その中で、サービス残業根絶のために実効ある措置をとることを求めました。第一生命経済研究所が六月二十六日に発表したリポートでは、サービス残業を解消し、新規雇用に振り替えれば、百六十一万人の雇用が生み出され、失業率が現在の水準から2・4ポイント低下すると試算。個人消費は、所得や余暇時間が増加することにより5・1ポイントもの上昇が見込まれるといいます。七月二十三日、党首討論で若者の雇用問題を取り上げた志位和夫委員長はこの調査をもとに、大企業のサービス残業をなくせば八十四万人分の雇用が増えると指摘しました。
厚労省もサービス残業摘発の姿勢を強めています。今年五月には、サービス残業解消の「指針」を発表。「賃金不払残業は、労働基準法に違反する、あってはならないもの」として、使用者が労働時間の適正な把握に努めることを指示しました。サービス残業をせざるをえない職場風土の改善、チェック体制の整備などにも踏み込んでいます。
道理ある主張が政府の重い腰をあげさせ、国民の世論や運動と結びついて社会を動かし始めています。
日本共産党三菱電機伊丹委員会 山本博昭委員長 三菱電機は二〇〇二年四月、七百人の労働者に七千万円の未払い残業代を支払いました。それまではただ働きが月百時間を超えるケースもあり、家族から「これでは過労死する」「万一を考え夫の労働時間を記録している」などの声が出ていました。
〇一年四月の厚労省通達を機に、残業日誌運動にとりくみました。国会で大森猛衆院議員などに追及してもらい、十一月には大沢辰美参院議員とともに尼崎、伊丹両労基署に通達の徹底とサービス残業の是正を申し入れました。
労基署は未払い残業代を支払わせたほか、始業・終業時刻の日々の記録や深夜労働の原則禁止などを会社に指導し、会社も受け入れました。今では残業はすべて申告でき、基本的にきちんと支払われます。「ノー残業デー」で週二日は午後五時に帰れるなど職場は大きく変わりました。ただ、他社との競争や納期に追われてサービス残業が残っている部門もあります。新しい厚労省「指針」も活用し、ルールが守られる職場や社会を作りたい。
新日本婦人の会愛知県本部 水野磯子会長 トヨタで残業をチェックする機械が導入されたのは画期的です。あれだけの大企業をそこまで動かした運動や世論はすごいと確信が持てます。
若いお母さんからアンケートをとると、「夫が仕事から帰ってこないので、うちはまるで母子家庭」という声がたくさん出てきます。「子どもをお風呂に入れるのも大変」「夕食は一家そろってが本当は当たり前よね」と対話がひろがります。「心配事」に「夫の健康」をあげる人も多い。サービス残業をなくすことは、女性たちの「当たり前の生活を取り戻したい」という願いの実現と重なるんです。
家族ぐるみ、地域ぐるみで運動がさらにひろがれば、日本の社会は大きく変わるのではないでしょうか。
1月21日 衆院本会議 吉井英勝議員 02年度補正予算案への質問でサービス残業の根絶、長時間労働の規制を提起 23日 衆院予算委員会 山口富男議員トヨタの長時間労働を告発 2月 4日 衆院本会議 穀田恵二国対委員長 サービス残業の根絶などを緊急提案 5日 参院本会議 市田忠義書記局長長時間労働を強いている事業所に雇用拡大の計画を持たせるよう提起 28日 衆院予算委第5分科会 大森猛議員 東芝のサービス残業を告発 3月 4日 衆院本会議 松本善明議員 政府予算案への反対討論で「過剰なのは雇用でなく労働時間」と主張 6日 参院予算委 筆坂秀世議員 スズキのサービス残業を告発 10日 参院決算委 大沢辰美議員 三菱電機のサービス残業を追及 12日 衆院国土交通委 瀬古由起子議員 国交省地方整備局のサービス残業を告発 17日 参院予算委 井上哲士議員 光文社で24歳で過労死した青年の実態をとりあげ裁量労働制拡大に反対 26日 参院厚生労働委 井上美代議員バス事業での長時間労働を告発 28日 参院本会議 富樫練三議員 政府予算案に反対、サービス残業根絶による雇用拡大を提起 28日 参院予算委 林紀子議員 同上 4月13日 衆院厚労委 小沢和秋議員 検疫所でのサービス残業を告発 22日 参院厚労委 小池晃議員 青年の雇用対策でサービス残業の解消を要求 5月28日 参院国民生活・経済調査会 西山とき子議員 サービス残業根絶などルールある社会づくりを提起 6月 4日 衆院経済産業委 塩川鉄也議員トラック業者の長時間労働を追及 11日 衆院内閣委 児玉健次議員 出生率低下と長時間労働について質問 16日 参院決算委 八田ひろ子議員 男性正社員の5人に1人が年3000時間の労働を強いられていることを告発 7月17日 参院内閣委 畑野君枝議員 少子化と長時間労働について質問 18日 衆院予算委 佐々木憲昭議員 サービス残業の一掃を提起 23日 党首討論 志位和夫委員長 青年の雇用対策でサービス残業の一掃を提起