2003年8月1日(金)「しんぶん赤旗」
国立大学法人法には、二十三項目にも及ぶ付帯決議が参議院の文教科学委員会でつきました。審議を通じて政府・文部科学省が法の不備を否定できなくなったことを反映した項目もあり、法的拘束力はありませんが今後のたたかいの足がかりとなりうるものです。主なものをみてみます。
「三、役員等については…選任理由等を公表すること。また、政府や他法人からの役員の選任については、その必要性を十分に勘案し、大学の自主性・自律性を阻害すると批判されることのないよう、節度を持って対応すること。監事の任命に当たっては、大学の意向を反映するように配慮すること」
法人化後新たに置かれる理事・監事は全国で最大五百八十四人にのぼります。ここに官僚が天下り、人事面からの大学統制とならないかが問題になっていました。「文科省は天下りで省益をむさぼろうとしている」との国民の疑惑や批判も意識せざるを得なかったものです。
「五、中期目標の実際上の作成主体が法人であることにかんがみ、文部科学大臣は、個々の教員の教育研究活動には言及しないこと。…原案の変更は、財政上の理由など真にやむを得ない場合に限ること」
法律は、中期目標を文科相が定め、中期計画を文科相が認可するとしています。「教育研究の内容には介入しない」との文科相の弁明も、法案の国会提出前から各大学に文科省が目標・計画の作成を詳しく指示し、教育研究内容についての資料まで提出を求めた文書の発覚で崩れ去りました。付帯決議は文科相に改めてクギを刺しています。
「六、法人に求める中期目標・中期計画に係る参考資料等については、極力、簡素化を図ること。また、評価に係る業務が教職員の過度の負担とならないよう、特段の措置を講ずること」
文科省に事前準備を事細かに指示されたことによって、計画案を何度も書き直しさせられるなど、大学現場が過度の負担を強いられたことが問題になりました。それを反映したものです。
「十一、…(総務省の)独立行政法人評価委員会からの国立大学法人等の主要な事務・事業の改廃勧告については…各大学の大学本体や学部等の具体的な組織の改廃、個々の教育研究活動については言及しないこと。…」
法人化後、各大学が文科・総務両省の評価委員会の評価を受けることについて「二重チェックで大学の負担が増す」との懸念がありました。また、中期目標の期限が終了する六年ごとの評価の際には、総務省の評価委員会が組織の改廃を文科相に勧告できることが問題になりました。そこに一定の歯止めをかけたものです。
「十五、法人化に伴う労働関係法規等への対応については、法人の成立時に違法状態の生ずることのないよう、財政面その他必要な措置を講ずること。…」
日本共産党は衆院での審議以来、政府が大学の安全衛生上の問題の改善をおこたってきたことによって、法人化で労働安全衛生法が適用されると大量の違法状態が発生することを告発してきました。改善には莫大(ばくだい)な費用と手間がかかります。それを各大学まかせにせず国が責任を持って対処する必要性が明記されたことは重要です。
(つづく)