2003年7月30日(水)「しんぶん赤旗」
小泉純一郎首相は、二十九日の記者会見で、自民党総裁選の争点に郵政民営化などの「改革路線」をすえることを強調しました。
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首相が争点にあげた郵政民営化は三年前の総裁選以前からの持論。銀行の競争相手である郵便貯金を「弱体化・解体」するなどあからさまな銀行応援政治です。郵便事業の問題でも全国一律のサービスが成り立たなくなり、信書の秘密やプライバシーが侵害されかねません。
郵政民営化自体がこうした問題点をもつものであるだけでなく、これを持ち出した意図も問題です。首相自身、自民党内に異論が強いテーマを争点にあげたのは「国民をひきつけるため」(「読売」二十九日付)と言明したとの報道もあります。総選挙を視野に、「小泉VS抵抗勢力」という偽りの対決構図をあらためてつくり出すことを狙っているのです。
しかし、この争点設定自体が、小泉「改革」が国民的に求められているものとはかけ離れていることをあらためて示しています。首相は、会見で、長期化し、ますます深刻となる不況からいかに脱出し、日本経済を再生するのかという問題にはほとんどふれませんでした。わずかに、銀行などに公的資金をつぎこむ「金融改革」と、経済特区などの「規制緩和」などをあげ、「経済の活性化」をうたいましたが、肝心の国民の暮らしをどう応援するかは皆無でした。
こうした小泉「改革」のもと、国民の暮らしがいよいよ深刻な事態に陥っているのは、勤労者世帯の年収の落ち込みや、高水準で続く失業・倒産などをみても明らかです。三万人を超えつづけている自殺者の理由でも、経済・生活理由が激増しています。
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外交関係でも、首相は「日米同盟と国際協調の重要性をわきまえた」などといいましたが、「重要性をわきまえた」のは日米同盟の方だけでした。イラク特措法では、イラク国民の要請も国連の要請もないのに、米国の要求に付き従っただけでした。
イラク問題でも、平和解決を求める仏独ロ中などの主張に目もくれず、米国による無法な戦争を「勇敢な決定」と賛美。大量破壊兵器の査察内容を検証することもなしに、大量破壊兵器の「存在」という米国の言い分をおうむ返しにしたのでした。
いくら「小泉VS抵抗勢力」などという偽りの対決構図で国民の目をひきつけようとしても、小泉「改革」の破たんと異常な対米追随の実態はごまかせません。
アメリカいいなりでなく自主的な平和外交を展開し、国民の暮らしを応援して経済を立て直すという、日本共産党が提起する方向に踏み出すことこそ求められています。(藤田健記者)