日本共産党

2003年7月27日(日)「しんぶん赤旗」

ニュースと話題の? Q&A

東京電力の“電力不足”問題

原発頼みのあり方を根本から見直さないとね


意図的なトラブル隠し
一時17基全部が停止

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 東京電力の原発が運転停止状態になって、電力不足のため首都圏で停電が起きそうだっていわれていたけど、どんな状況なの?


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 東京電力では原発の重要な機器で発生していたひび割れなどを意図的に隠していたことが昨年八月に発覚しただろう。東京電力には全部で十七基の原発があるが(別図)、そのほとんどでトラブル隠しがおこなわれていた。トラブル隠しが発覚した後の調査ではさらに、事故のときに放射能を封じ込める原子炉格納容器の気密性試験でデータをごまかす工作をしていたことも明らかになった。

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現在、4基とも停止している福島第二原子力発電所

 これらは原発の安全性を根本から損なう事態として当然大問題になった。経済産業省の原子力安全・保安院は、“ただちに安全性に重大な影響はない”として運転を認める態度をとったが、原発が立地している地域の住民は、全部の原発を運転停止して点検するように求めたんだ。

 東京電力もこれを受け入れざるをえなくなり、順次運転を停止して、今年四月十五日には十七基全部が運転停止する事態になった。こうしたなかで、政府と東京電力は“電力危機”を盛んに宣伝し、原発の運転再開を急いだ。

 五月九日には、柏崎刈羽原発6号機(新潟県)を運転再開させ、現在までに四基の原発を再稼働させている。政府や東京電力の発表では、この夏の電力需要がピークになるときでも、これで乗りきれるという見通しだ。

変わらない経済性優先の姿勢
規制機関の分離独立を

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 東京電力のトラブル隠しは、原発の安全性を損なう事件だったわけだけど、事件の後、安全対策は改善されたの?


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 東京電力は、トラブル隠しが発覚した半月後の九月十七日に、「調査報告書」を発表して、長年にわたって不正が組織的におこなわれたことを認めた。

 そのなかで、不正がおこなわれた動機・背景として、「国に対するトラブル報告を行うと、発電所の停止期間が予定より長くなってしまうという不安感が強かった」などと、原発を効率よく運転させることを安全よりも優先させていたことを明らかにしていた。

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 しかしその後も、原発の重要機器にひび割れが多発しているのに、そのまま運転しても大丈夫だと盛んに強調するのを見ていると、電力会社の姿勢が転換されたとは思えないね。

 電力会社の言い分をそのまま受け入れて、「安全宣言」をしている経済産業省も、安全性より運転を優先させている対応が目立つよ。

 東北電力は、炉心隔壁(シュラウド)に多数のひび割れが見つかった女川原発1号機を、ひびを補修しないまま二十三日に再稼働させてしまった。

 原子炉の重要な機器の損傷を補修しないままの運転再開は初めてのことだ。電力会社が「安全だ」というのを経済産業省が認めたものだが、原発を安全面から規制するべき機関が、電力会社の応援団の役割を果たしている経済産業省内にあることには各方面から批判がでている。

 米国では、原発の推進機関と規制機関がはっきり分離されていて、規制機関が大きな力をもっている。推進機関と規制機関の分離は国際条約でも決められていることだ。政府の責任でまずやるべきだよ。

世界的に脱原発の動き
新エネルギー開発に力を

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 ヨーロッパを中心に原発依存から脱け出そうとしているけど、日本はこれからも原発の大増設を推進しようとしているわね。


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 原発を運転すると核燃料棒に放射性物質が大量に蓄積するんだ。これが外部に放出されるような重大事故の起こる危険性があることと、使用済み核燃料の処理技術が確立されていないことから、原発技術は未成熟だといわれている。各国が原発依存から抜け出そうとしているのもこれが大きな理由なんだ。

 ところが、日本政府と電力業界は、これからも原発を大増設する計画をたてている。経済産業省は、今後十年程度のエネルギー基本計画というのをつくっているんだが、最近明らかになった原案では、原発を「基幹電源」と位置付けて促進し、核燃料サイクルを推進するとしている。

 エネルギーの「安定供給のため」というんだが、今回の事態をみても、原発への依存増大こそが、「安定供給」に危機的状況をもたらす可能性の大きいことを実例で示した。

 電力会社が原発にしがみつく背景には、高額な設備投資をすれば、それだけ大きな利益を確保できるという電気料金制度のしくみがあるんだ。

 原発全廃を決めているドイツでは、省エネルギーとともに、風力発電などの自然エネルギー開発に積極的にとりくんでいる。ところが、日本のエネルギー関係予算では、原子力に四千三百六十億円つぎ込む一方、新エネルギー対策に千六百億円以下という状況だ。

 政府資料から日本共産党の吉井英勝衆院議員が試算した結果によると、日本の新エネルギーの潜在量は、電力会社の総供給電力量に匹敵するという。電力会社のもうけのための原発推進政策を改めて、日本も、省エネルギー、新エネルギー技術の開発に力をいれるべきだと思うね。



東京電力の最大電力需要と供給力の見通し
 7月8月
最大需要(通常時)6100万キロh6100万キロh
(猛暑時)64506450
供給力64806420
需給調整契約の実施によって減らされる需要
 140140
(供給力には追加対策分を含む)

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