2003年7月23日(水)「しんぶん赤旗」
献金した個人・企業名の公開基準を年五万円超から二十四万円超にして非公開枠を拡大する与党の政治資金規正法改悪案の趣旨説明が、二十三日の衆院倫理選挙特別委員会で行われます。与党は臨時国会での成立を狙っていますが、企業献金にヤミの部分を拡大する悪法は廃案にすべきです。
三日の与党党首会談で小泉純一郎首相は「政治資金規正法の改正案も今国会で成立させてほしい」とのべましたが、延長会期末まで十日に迫った八日、保守新党の熊谷弘代表は「今国会成立が不可能なら次の国会でテロ特措法(延長案)と並んで速やかに審議をして通過させる」として、与党の最優先課題に挙げました。
もともと今国会の重要な課題の一つは、公共事業の口利きにまつわる腐敗や自民党長崎県連の違法献金事件、坂井隆憲衆院議員の政治資金規正法違反など相次ぐ「政治とカネ」での腐敗を止められるかどうかでした。
小泉首相は国会でムネオ疑惑の追及が続いた昨年の通常国会中に、与党三党に対し公共事業受注企業からの献金規制の検討を指示。ところが、一年以上たって出てきたのは、規制どころか政治資金の公開基準を大幅に緩和して企業献金を集めやすくする改悪でした。
日本共産党の佐々木憲昭衆院議員の調べでは、仮に年二十四万円以下を非公開にすると、閣僚が二〇〇一年に受け取った企業献金の五−九割以上が不透明になります。
十八日の衆院予算委員会で民主党の岡田克也幹事長は、埼玉県知事(辞職)の娘が献金を年五万円に分散するよう企業に要請したとされることをあげ、「(上限)二十四万円に上がれば、こうしたごまかしが効きやすくなる」と質問しました。
首相は「別に緩和とかそういうことではない。月二万円以内の献金が不正や大幅改悪につながるとすぐ結びつかないんじゃないか」と強弁。公共事業受注企業の献金規制を「一つの方法だと思う」(二〇〇二年三月)とのべていた“初心”はどこへやら、みずからの指示とかけ離れた改悪案を手放しで歓迎しました。
公明党はこの改悪について「原則五万円は動かさない」「振り込みにした」(二十日、冬柴鉄三幹事長)と弁明しています。しかし、振り込みであろうが年二十四万円(月二万円)以下であれば献金者名などを政治資金収支報告書に記載する必要がなくなり、国民の監視の目を逃れることに変わりはありません。
二十三日には、与党が審議入りを棚上げしていた野党四党の公共事業受注企業の献金禁止法案も趣旨説明されます。
長崎地裁は自民党長崎県連事件の有罪判決のなかで、県連側が受注実績に応じゼネコンに寄付を要求していたことについて「公共工事受注の見返りに選挙運動の資金の提供を求めた」「賄賂(わいろ)的な性格も濃いもの」と断じました。
数々の事件の教訓に立ち戻るなら、公共事業受注企業の献金を禁止する野党案こそ成立させるべきです。(古荘智子記者)