2003年7月23日(水)「しんぶん赤旗」
日本共産党の吉岡吉典議員が二十二日の参院外交防衛委員会で行ったイラク特措法案の追及は、米英によるイラク占領が国際法上も正当性がないばかりか、実態上も「泥沼化」していること、憲法に照らして自衛隊の派兵強行は許されないことなどを明らかにしました。
吉岡氏はイラクの現状について、戦争が完全に終結していないことを政府に確認。「そうしたところに自衛隊を派遣することが憲法上できるのか」とただしました。石破茂防衛庁長官は「『戦闘地域』でない地域で活動することは憲法の要請に反しない」と答弁。吉岡氏はその答弁を認めれば、「戦争中の国であろうとどこであろうと自衛隊を送ることができるようになる」と批判し、そうしたことを憲法は想定していないと強調しました。
さらに吉岡氏は、中東の多くの国が米英によるイラク戦争も、その後の占領も支持していないと指摘。イラクの統治評議会に参加するイスラム教シーア派組織指導者も、自衛隊派兵は「日本の利益にはならない」(二十一日付「朝日」)とのべていることを強調しました。
吉岡氏は、イラク占領の「泥沼化」について、反米デモなどイラク国民の抵抗や局地戦闘をなくそうとする米英の「安全確保活動」がイラク住民の反発をかっていると指摘。米占領軍によるデモ隊への発砲は「正当な『安全確保活動』かどうか」と政府の見解をただしました。
川口順子外相は「安保理決議一四八三にもとづき、米軍は治安維持等の権限をもっている」と答弁。吉岡氏は同決議が占領を正当化しているという主張は国際的には通用しないと批判し、国際法学者の「軍事占領が違法と見なされ得るので、いかなる活動も攻撃対象とすることが可能」という見解を紹介。「占領された側の人民の立場をまったく考慮せず、『正当性がある』としてこうしたことを繰り返せば、イラク人民の反抗を強めるという悪循環になる」と批判しました。
吉岡氏は「イラクに行った自衛隊員は国際法上どういう身分、地位になるか」について質問。「自衛隊員が捕虜になった場合、捕虜の扱いに関するジュネーブ第三条約の適用を受けることになるのか」とただしました。
外務省の林景一条約局長は「自衛隊が行う活動は、武力の行使に該当せず、『非戦闘地域』で行われるために武力紛争の当事国となることはない」などとし、「ジュネーブ諸条約の規定の適用を受けることはない」と答弁。吉岡氏は「大変深刻な問題だ。軍隊を戦争が継続する地域に送りながら、捕虜になっても保護の対象にならないというのは、憲法上派兵できないのに、(それを)やろうとすることの矛盾だ」と指摘しました。
イラクに派兵される自衛隊と占領当局(CPA)や連合軍司令部との関係について、外務省・西田恒夫総合外交政策局長が「必要に応じて種々の調整を行う」と答弁したことをうけ、吉岡氏は「占領軍とたえず連携をとる活動を行うことになる。米英軍への攻撃が頻繁になっているのと同様に、自衛隊に対する攻撃の危険も起きる」と指摘しました。
日本のように「戦闘地域」と「非戦闘地域」、「武力行使」と「正当防衛」を区別している国はあるのかと質問。福田康夫官房長官はその区別が「憲法九条の規定によって必要だということで、他の国にはない」とのべました。
吉岡氏は、他の国にない日本独自の解釈をつくっても、「イラク国民にその区別は通用しない。米軍と同じ(攻撃される)危険を自衛隊がもちうる」と強調。「日本側の解釈でイラク側が区別してとりあつかうと考えるのは甘い対応だ」と批判しました。
これに対し、石破氏は「攻撃するかしないかを決めるのは向こう側だ」と認める一方、「憲法の趣旨を守ることは大事だ」と発言。
吉岡氏は「『憲法を守る』というなら、自衛隊を送ることをやめるのが、憲法を守る一番確実な方法だ」と強調しました。