日本共産党

2003年7月22日(火)「しんぶん赤旗」

農業委員会の解体迫る小泉「改革」(上)

株式会社の農地支配視野に


 地域農業や農地を守る大事な役割をもつ農業委員会。国民のくらしや経済を脅かす小泉「改革」のもとで、その解体や組織の弱体化につながる制度見直しがすすめられています。

組織を縮小へ

 その一つは、農地が一定面積以上あるすべての市町村に設置されている農業委員会を、市町村の“判断”で廃止できるようにせよという要求です(必置規制の廃止)。政府の地方分権改革推進会議が昨年十月の最終報告に盛り込んだものです。食料の安定供給に欠かせない農地を、農地法など全国統一ルールのもとで維持・活用することを困難にするものです。

 二つ目は、農業委員会の運営に必要な国の予算の削減です。小泉首相の諮問機関である財政経済諮問会議は昨年十一月、「(自治体の)選択性にして…、(農業委員会の)人件費の交付金をやめてはどうか」(片山総務相)など農業委員会交付金の一般財源化、制度・組織の縮小を求めました。使い道を特定されている交付金を一般財源化すれば農業委員会の財源の保障がなくなり、活動に重大な支障をきたすことは必至です。

 三つは、政府の総合規制改革会議が昨年十二月と今年七月の答申で、「農地利用規制の適正化に向けた農業委員会の手続き等のあり方」に関連して、株式会社一般の農地取得の解禁について執拗(しつよう)に取り上げていることです。

 この問題は、みずから耕作する者の権利を保障する戦後の農地制度を根本から揺るがすものです。投機目的を含む資本による農地支配を許すとともに、農地の権利移動などの是非を耕作農民の自治で判断する農業委員会制度の基本的なあり方を否定してしまいます。

改悪法を準備

 農水省の「農業委員会に関する懇談会」がこれらの指摘を含めた報告書を今年四月にまとめました。そこでは、農業委員会が「今日でも農政上の意義を有する」と明記し、農業委員会必置規制の廃止や交付金の一般財源化は一応退けています。しかし、“農業委員会の活動が総花的、農地・農家の減少に対応した組織の適正化が不十分”などとして、活動・組織全般の「抜本的な改革」の必要性を強調しています。委員公選制の見直しについては両論併記とし、新しい選出方法を検討するとしています。

 具体的には、農業担い手への農地集積=農業「構造改革」の推進、農業委員会を設置する農地面積基準を引き上げ、農地面積が小さい市町村の農業委員会の廃止、委員定数の削減などをあげています。この報告書を受けて農水省は来年の国会に関連法「改正案」を提出する方向で検討を進めています。

 農業委員会の全国組織である全国農業会議所も報告書をふまえアンケートを実施しています。農業委員会としても正面からの議論が求められています。(党農漁民局・橋本正一)(つづく)


 農業委員会 委員の大半が三年に一度の農民による選挙で選ばれます。区市町村に置かれ、唯一、農地の売買や貸し借りなどの許認可権をもち乱開発を防ぎます。農業振興にかかわる専門委員会として提案や意見を地方自治体や国に出すことができます。


株式会社の農地取得

産廃や投機ねらい

 小泉内閣の「総合規制改革会議」(議長=宮内義彦オリックス会長)で、農地を株式会社一般に取得させようとする動きが続いています。

 企業が農業生産に熱心かと思ってしまいますが、決してそうではありません。ごく特殊な例を除き、期待される投資利益はでないからです。

 たとえば、株式会社が水田を買って稲作をやろうとすると、一ヘクタール当たり平均千七百四十八万円の投資が必要です(市町村の農業専用地域の価格)。

 ところが、この水田から得られる米の農業粗収益は年間百二十八万六千円です。ここから農機具や肥料・農薬代、人件費を払います。投資が借入金だと金利が2%として元利均等十五年償還では年間百三十六万円かかります。企業は大赤字です。農業用に投資するメリットはまったくありません。

 野菜もアジア諸国から「開発輸入」が盛んであることをみれば、畑を買うメリットがないことは一目瞭然(りょうぜん)です。

 ところが、石原行革規制改革担当相は、同会議の意向にそって株式会社一般の農地取得に積極的です。

 株式会社が農地を自由にしたいという衝動にかられるのは、産業廃棄物の捨て場や農業以外の投機的利用です。

 現在も農地法を無視して産廃を不法投棄する例はあります。しかし、農業委員会が農地法違反として、元の通りに回復する命令を出すことができます。農地以外の転用をする際は、許可を出さないこともできます。農地が少ない農業委員会も環境保全という役割では重要です。


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