日本共産党

2003年7月21日(月)「しんぶん赤旗」

長崎・男児殺害事件 始まる模索

不安共有から始めたい

現地で懇談会 親、教師ら一堂に


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少年と面会後会見する戸田久嗣弁護士=17日、長崎市

 長崎市の男児殺害事件で、補導されたのが中学一年生の男子生徒(12)、被害者が四歳の幼稚園児だったことは、子を持つ親たちに不安を広げています。十九日夜、事件現場から五百メートルも離れていないビルの一室で開かれた「事件についての緊急懇談会」(主催・同実行委員会)。衝撃と不安を乗り越え「何かしなければ」と集まった人は百人を超えました。模索を始めた参加者の声から何が問われているのか考えました。(菅野尚夫記者)

こないでくれ

 「なぜ! どうすればいいの、とばらばらに思い悩んでいた人が一堂に集まった意義は大きい」というのは主催者の一人、国貞亮一さん(45)。「教育を考える会」や「登校拒否を考える親の会」などを中心に親や教師たちが広木克行・神戸大教授の問題提起を受けて意見交換しました。

 少年と同じ中学に通学する生徒の母親は「中一の娘は幼稚園の見学を楽しみにしていたが、訪問先の幼稚園からは『こないでくれ』と言われた」といいます。

 「子どもが『ワー。自分とおない年の子だ』といって外に出れなくなった」と話すのは、不登校の中二の子を持つ母親。「言葉には出さないけれどもおびえています。なぜ少年は同級生の友達といる目の前で補導されたのか」と県警のやり方を批判しました。

 声を詰まらせて話したのは四歳の子を持つ父親。「寝顔をみているとこんなにかわいい。駿君の親の悲しみを思うと涙が出て…」。駿君が連れ去られた量販店に子どもをつれて行くという父親は「ゲームのところに一目散に駆け出していく。人を疑うことを教え、注意しなければならないのか」といいます。

いつ息抜きを

 「子どもの手を離せない時代」をめぐって討論が熱をおびました。「子どもは目の届く管理下で育てた。手を離すべきではない」という母親。この意見に別の母親は「スーパーに子どもを連れて行き、遊ばせて買い物した。手を離すと悪くいわれ、駿君のお母さんも悪いとなり、母親の責任にされる。いつ息抜きするのか」といい、「どうやって子育てすればいいのか追いつめられた思い」と率直に苦悩を話しました。

 「卒園児ではないかとドキっとし、胸が痛む」と話すのは幼稚園で働く男性。「四、五日前に急きょ父母の勉強会をもった。自分の子が被害にあったらやりきれない。でも、あと何年後にはわが子も少年と同じ年ごろになる。勉強会では、『小さなシグナルを感じてあげて円満に育てたいと思いながらたたいてしまう』と涙ながらに話したお母さんがいた」

 補導された少年は、小学、中学を通じて「注意されたり、友達ともめたりすると、大声でアーと奇声を出してものすごいスピードで教室を飛び出していくことがあった」という証言を別の取材で聞いたことがあります。

つなげていく

 懇談会では、元教師が「幼稚園、小学校とシグナルを感じたら連携する。つなげていく。そうした社会だったら加害者を生まない対策が取り組めるのではないか」と問題提起しました。

 国貞さんは「月曜日に呼びかけて口コミだけでこんなに集まってくれました。今日をスタートに事件がおとなに投げかけた問題を話し合っていきたい」と話していました。


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