日本共産党

2003年7月21日(月)「しんぶん赤旗」

明石歩道橋圧死事件から2年

真相究明求める遺族


 兵庫県明石市大蔵海岸の花火大会で、歩道橋上で“群衆なだれ”が起き、十一人が圧死、二百四十七人が負傷した事件から二十一日で丸二年を迎えます。

 事件は、警察や明石市などによる、ずさんな警備計画や対応の無責任さなどによって大惨事になったことが明らかになっています。遺族は、家族を亡くした悲しみを乗り越えて、昨年十月、八遺族十七人(現在は九遺族十九人)が県警・明石署、明石市、警備会社の責任を問い、損害賠償を求めて神戸地裁に提訴。真相究明と責任の明確化、再発防止のためにたたかっています。

 また、昨年十二月、神戸地検が業務上過失致死傷罪で警察官、市職員、警備会社元社長ら五人を起訴。公判で、ずさんな警備の実態などが明らかになっています。事件の責任を問われてきた前市長は、ことし四月に任期半ばで辞任しました。

 明石市では十八日追悼コンサートが開かれ、遺族や市民ら約五百人が参加。現場の朝霧歩道橋には十八日から献花台が設けられ、市民らが追悼に訪れています。二十一日は、同歩道橋で、三回忌の法要がおこなわれます。


警察に第一義的責任

原告団長 下村誠治さんに聞く

写真
智仁くんが好きだったカメのぬいぐるみを手にする原告団長の下村誠治さん=神戸市垂水区の自宅で

 この事件の真相究明と再発防止にむけてたたかってきた遺族の二年間の思いを、二男の智仁ちゃん=当時(2っ)=を亡くした原告団長の下村誠治さん(45)に聞きました。

 ――二年たち、事件と智仁ちゃんへの思いは。

 何年たっても、原因が究明されないことには、心から悲しむことはできません。まだ混乱していて、事実を受け入れることもできない状態です。「なんで連れていったんやろ」という自責の念がずっとあります。

 生後八カ月だった三男がちょうど智仁と同じ年ごろになりました。毎日食卓に遺影を並べているので、「ともにいちゃん、連れてきて」とゆうたら遺影を持ってきてくれます。もう一人弟が生まれて同じ三人兄弟になりましたが、智仁は家族の一員やということをずっと教えていくつもりです。

 ――遺族のみなさんの先頭に立ってこられましたが、下村さんを駆り立てたものは。

助け求めたが無視され…

 目の前で子どもを持っていかれたこと、そして現場ですべてを見ていたことが大きいです。必死に歩道橋の下にいた警察官に助けを求めたのに無視され、救急車が遅れてほとんど治療も受けられず、最後は「手遅れだ」の一言で終わりました。

 突き詰めれば、僕自身が生きていくためなんです。当時、気が狂うほど泣いたけど、狂わなかった。亡くなった十一人が「まだやることがあるよ」とゆうてるような気がして。他の遺族もPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しみながら、「なんで家族を亡くしたのかを知りたい」という思いで一つになっています。やっぱり真相究明が親の責任やと思う。

 ――警察や行政の態度をどう感じましたか。

 この事故は、警察や行政の組織的問題に関係者個人の能力がからんだ組織的事故です。僕らは真実を知りたいと何度も要望書を出したのに、警察も明石市も自分たちに都合の悪い事実はいっさい隠してきた。そこが一番許せないところです。

 警察はことなかれ主義で、警備計画の責任者だった県警の地域部長は起訴の一カ月前に辞めて、「辞めたら罰則はない」で片づけられた。これでだれが納得できますか。前市長も、法的責任を負う賠償を拒否して、まともな謝罪もなかった。事故の責任をとる形で辞表を出したのは今年の二月。遅すぎますよ。

 ――民事訴訟はどのようにすすんでいますか。

徹底的に追及したい

 口頭弁論は、遺影を持って臨みました。証人席に遺品を持ち込むのは異例らしいんですが、一番無念なのは亡くなった子たちなんですから当然でしょう。

 雑踏警備は警察法や警職法などで警察に課された責務であるにもかかわらず、警察はあくまで、「主催者の自主警備が原則」という論にしがみついています。もちろん明石市と警備会社の責任も問いますが、暴走族対策を優先した警備体制を敷き、当日も大勢の助けを求める声や一一〇番を無視した県警・明石署に第一義的責任がある、そこを追及しています。

 ところが、三者は法廷でも、県警は「市に必要な助言・指導をした」、市は「歩道橋上の危険な状態は警察から知らされていなかった」と責任をなすりつけあい、事件に真摯(しんし)に向き合っているとはとても思えない。今後、徹底的に追及していきたい。

 ――今後の方向は。

 この二年間、信楽高原鉄道列車衝突事故をはじめ他の事故遺族の方々が、怒りだけやった僕らに、「自分自身のためにも再発防止を」と導いてくれたことで、方向性が見えたんです。

 家族のためにも、もう二度とあんな事故を起こさないためにも、少しでもいい世の中にしたい。そのために、さまざまな事件事故の被害者にもよびかけて、安全対策確立のとりくみもすすめたいと思っています。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp