2003年7月20日(日)「しんぶん赤旗」
「一元化」ってなに |
幼稚園と保育所一つに |
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最近、「幼保一元化」がいわれているけれど、幼稚園と保育所をひとつにするということなの?
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幼稚園は学校教育法にもとづく教育施設で、一日四時間、三歳児以上を教え、「預かり保育」も増えている。保育所は親の就労などで保育に欠けるゼロ歳から就学前までの子どもを受け入れる、児童福祉法にもとづく児童福祉施設となっているわね。幼稚園は文部科学省、保育所は厚生労働省の所管で、それぞれちがいもあるけれど大切な役割をもっているね(表)。
いま、五歳児の96%が幼稚園か保育所に通っていて、就学前教育としてほぼ全入に近い。幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を取得する人も増えている。
小さいときから豊かな人間関係や体を思いきり動かす体験をさせたいね。どの子にもそれが保障できるように、保育・教育内容の接近・充実をはかることは必要だと思うわ。全国には、幼稚園と保育所を同一敷地内や一つの建物に 併設して、相互に活用しているところが百七十一カ所あり(二〇〇二年五月現在)、子どもの実態や住民の要求にこたえて、保育・教育内容や運営を検討・工夫し、独自に予算を確保してすすめている自治体もあるね。
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小泉内閣の考えは |
財政負担減らしが動機 |
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小泉内閣の「骨太の方針」第三弾(六月二十七日閣議決定)や総合規制改革会議の答申(七月十五日)で「幼保一元化」がいわれているけど、どのように変えようとしているの?
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そこでいわれている「幼保一元化」は、国民がもとめていることとは全然ちがう。国の財政負担を減らすためにどうするか、ということから議論がはじまっているものよ。
「骨太方針」は、二〇〇六年度までに四兆円の補助金を削減する方針で、保育園の補助金四千億も削減対象になっているの。その手だてとして、保育と教育の「総合施設の設置」を検討するという。要するに、一体の施設にすれば保育園ではないから、今までのような補助金を出す義務がなくなる、保育への国の財政支出が削られるということね。職員配置や設備の基準が維持できるかどうか、保育料の値上げにつながらないか、保育予算に地域ごとの格差が生まれないか不安がだされている。
問題なのは、幼稚園と保育所がいっしょになった場合、就学前の子どもにふさわしい保育・教育の内容や環境をどう保障するかという論議がされずに、「職員の配置基準を幼稚園と同じにする」「保育所に設置が義務づけられている給食の調理室を廃止する」など、基準の低いほうにそろえるやり方よ。
幼稚園の入園年齢も緩和するとして、すでに二歳児も受け入れることにしているけれど、子ども三十五人に先生一人の枠しか国の補助金がない、これでは子どもに目がとどかないし、安全も守れない。
いま政府がやろうとしているのは保育や幼児教育の公的責任を縮小・放棄するものよ。だから日本保育学会の会長をはじめ、保育・教育関係者が、「子ども不在の『幼保一元化』」と批判している。自民党のなかからも「お金の問題から子どもの問題を議論するほど日本政府はいつから落ちぶれたのか」(橋本元首相)という声も出て、日本保育協会や全国私立保育園連盟、父母や保育労働者の反対運動もひろがっている。
安心して預けるには |
まず今の制度の充実を |
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待機児童が増えつづけて、「早くなんとかして」と期待する声もあるけど。
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保育所待機児童は、六万二千人で過去最多(〇二年十月)になっているね。小泉首相は「待機児ゼロ作戦」をかかげているけれど、定員を超えてのつめこみ保育が広がっていて事故発生も心配されている。「保育所を増やして」の声に真剣にこたえてほしい。
幼稚園は給食やお昼寝などの条件が不十分ななかで「預かり保育」をおこなっていて、子どもや職員の負担も軽視できない。
企業に依存して安上がりにしようというのではなくて、子どもは未来をになう社会の宝なんだから、安心して子育てできるように、国と自治体は必要な予算を確保し、しっかり責任をもつことが必要だと思う。まず、いまの制度を充実させるために、父母、保育・教育関係者の論議と国民的な運動が大切ね。