日本共産党

2003年7月20日(日)「しんぶん赤旗」

チェック

「サービス残業」していませんか


 残業しても割増賃金が支払われないサービス残業(不払い労働)が全国の職場でまん延しています。知っていても要求しにくいケースのほか、営業職や管理職、または裁量労働が適用されているから、自分には残業代が支払われないと思っているケースもあります。改めて、あなたにサービス(不払い)残業はないか、チェックしてみましょう。


営業職だから、残業代は出ない?

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 勤務時間の大半を会社の外で働く営業職の場合、労働時間がつかめないという理由で、一定の手当を出して残業代の支払い対象から外している企業が大半です。しかし、労働基準法にそんな規定はありません。

 使用者が残業代を支払わずにすむ、事業場外のみなし労働(労基法三八条二)が適用されるのは、「使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難な業務」(一九八八年一月一日基発一号)です。

 例えば、携帯電話やポケットベルなどで使用者の指示を受けながら働いている場合や、訪問先や帰社時刻など具体的な指示を受けて働いている場合は、通常の労働時間制が適用されます。

 いまでは、携帯電話やポケベルが普及しており、事業場外みなし労働は適用されないケースがほとんどです。

 事業場外のみなし労働が適用される場合でも、みなし時間を超えて会社に戻り仕事をした場合は、使用者はその分の労働時間をきちんと把握し、残業代を支払う必要があります。


管理職だから、残業代なんてない?

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「サービス残業を合法化する労働法制改悪を許すな」と宣伝するNEC労働者懇談会のメンバー=5月21日、東京・JR田町駅前

 東京労働局は「管理監督者の範囲は『適正』ですか?」とよびかけるリーフレットを作製しています。これは、管理監督者の範囲を不適正に広くとり、割増賃金を支払わずに過重な長時間労働を行わせている事例が少なからずあるためです。

 労働基準法は、管理監督者について労働時間、休憩、休日の法規制の適用除外を認めています(労基法四一条)。しかし、役付者であればすべてが管理監督者として例外的扱いが認められるものではありません。あくまで職務内容、責任と権限など実態に基づく判断が必要です。

 裁判では、「経営方針の決定に参画しあるいは労務管理上の指揮権限を有する等、その実態からみて経営者と一体的な立場にあり、出勤退勤について厳格な規制を受けず、自己の勤務時間について自由裁量権を有する者」(静岡地裁、七八年三月二十八日、静岡銀行事件)と規定しています。

 これに当てはまる管理監督者は、会社の中枢にいるごく一部の人です。これ以外は、割増賃金を要求する資格があります。

 管理監督者には該当しないとして、割増賃金の支払いを命じた裁判例を紹介します。

 【橘屋事件(大阪地裁、六五年五月二十二日)・本社工場の取締役工場長】 役員会に招かれず役員報酬も受けていないこと、出退社も一般労働者と同じ制限を受けている。

 【静岡銀行事件・銀行本部の支店長代理相当職】 欠勤・遅刻・早退の制限を受け勤務時間の自由裁量権を有していないこと、人事や機密に関する事項に関与したことがなく、経営者と一体となって銀行経営を左右するような仕事にはまったく携わっていない。

 【サンド事件(大阪地裁、八三年七月十二日)・生産工場の課長】 工場内の人事等に関与することはあっても独自の決定権はなく、勤務時間の拘束を受けていて自由裁量の余地はほとんどない。職務内容・給料・勤務時間の取り扱いが課長昇進前とほとんど変わらない。

 【レストラン・ビュッフェ事件(大阪地裁、八六年七月三十日)・店長】 従業員六、七人を統括し採用にも一部関与し店長手当の支給を受けていたが、タイムレコーダーで出退勤時間を管理され出退勤の自由はなく、仕事内容も店長としての職務だけでなく全般に及んでいる。


裁量労働だから、残業代はない?

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 まず、裁量労働が法の手続きを経て労働基準監督署に届け出た「裁量労働制」かどうか、確認が必要です(労基法三八条)。労使が勝手にきめたニセモノの裁量労働が職場に導入され、労働者にサービス残業を事実上強要しているケースが少なくありません。大手電機各社ではいまこれが問題になっています。

 たとえ会社が裁量労働制と説明しても、法が認めた以外は通常の一般勤務となり、使用者は割増賃金の支払い義務を負います。

 法的手続きがされている場合でも、法の趣旨から逸脱していることがあります。

 例えば、専門業務型の場合、対象業務である「新商品、新技術の研究開発等」であっても、数人でプロジェクトチームを組んで、チーフの管理のもとに業務遂行、時間配分が行われるケースは、裁量労働制に該当しません(八八年三月十四日、基発百五十号)。企画業務型では、本社など事業運営上の重要な決定が行われる事業場−つまり社長直結の部署に限って導入することが前提条件となっています(今国会でこの限定が撤廃されましたが、法が施行されるまでは当然適用される)。

 そのうえで、企画、立案、調査、分析の四つが含まれた業務についていること、仕事の方法が大幅に労働者の裁量に委ねられる必要があり、手段や時間配分について使用者が具体的指示をしないことという要件があります。

 また裁量労働制であっても、使用者は深夜業や休日労働は割増賃金を支払わなければなりません。


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