日本共産党

2003年7月20日(日)「しんぶん赤旗」

イラク特措法案

派兵先は「戦闘地域」

違憲の武力行使 審議と実態で鮮明に


 イラク派兵の特措法案について、政府は、自衛隊の活動は「非戦闘地域」で行うから、憲法違反にならないと繰り返しています。しかし、「非戦闘地域」の設定という議論は、イラクの現実と国会審議を通じて、まったくの虚構にすぎないことが浮き彫りになっています。(田中一郎記者)


バース党残党と全域で戦闘中

 「われわれはイラク全域でバース党の残党などと戦闘中だ。彼らは地域レベルで組織化されており、古典的なゲリラ戦を展開している。それは低強度の紛争だが、それはどう言おうが、戦争だ」

 十六日、イラクを管轄する米中央軍のアビザイド司令官は、同国の状況について、こう言明しました。

 日本政府は、バース党残党などによる組織的・計画的な攻撃が行われる地域は、「戦闘地域」であり、自衛隊は活動できないとしてきました。

 アビザイド司令官の言明は、政府の言う「非戦闘地域」の設定が不可能なことを示すものでした。

派遣予定先で次々と襲撃が

 しかも、実際に、政府・与党がこれまで自衛隊の派遣を検討した地域で、次々と米英軍への襲撃が起こり、戦闘が発生。派遣先についての政府答弁も二転三転してきました。

 政府は、六月上旬の現地調査で、バグダッド市内とバグダッド以南の地域で「治安状況は改善」と判断。自衛隊が「(陸上で)ガソリンスタンドのような形で給油拠点を設置し、各国軍隊に利用してもらう」(内閣官房)ことを検討していました。

 ところが、そのイラク南部で同月二十四日、英軍が襲撃を受け、兵士六人が死亡。政府は「南部は安全だと言われながら何事であるかという、ご指摘をいただいた」(石破茂防衛庁長官、同月二十六日)と動揺を隠せませんでした。

 そこで与党が持ち出してきたのは、バグダッド国際空港にある池を使っての浄水・給水活動と、C130輸送機による空輸でした。「バグダッド空港は、五キロ四方をアメリカ軍が厳重に警備」しており、「猫の子一匹入れない」(杉浦正健・与党イラク調査団団長、七月一日)から、安全だというのが理由でした。

 ところが、バグダッド空港で十六日、着陸しようとした米軍のC130輸送機が、地対空ミサイルの攻撃を受ける事態が発生。翌十七日、政府も「バグダッドとその近郊でアメリカ兵に対する攻撃が相次いでいる」(外務省の安藤裕康中東アフリカ局長)との認識を示さざるを得なくなりました。

 この日、自民党議員からは「私が自衛隊員だったら、装甲車もない、無反動砲もないといって、(イラクに)行けといわれたら行かない。死にますから」(舛添要一氏)という声まで上がりました。

 しかも、米軍は、自衛隊の活動について、バグダッド空港周辺での給水活動は「ニーズがない」とする一方、バース党残党などの掃討作戦を行っている、バグダッド北方のバラドでの給水活動を打診していると報じられています。

 まさに、米軍のそもそもの「ニーズ」は、自衛隊の「戦闘地域」での活動なのです。

上官の命令で組織的に反撃

 派遣された自衛隊が、イラク国民やバース党残党による攻撃の標的にされる危険があることは、小泉純一郎首相みずから「安全なところはないと言えば、ない」(九日)と認めます。

 政府は、イラク国民からの襲撃であろうと、バース党残党からの攻撃であろうと、自衛隊は、「正当防衛」「緊急避難」を口実にすれば、武器を使用して反撃し、相手を殺傷できるとしています。

 持っていく武器の種類に制限はありません。

 しかも、法案は、武器の使用について、上官の命令に従って組織的に行うことを定めています。

 そうなれば、まさに応戦であり、憲法違反の武力行使そのものです。


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