2003年7月19日(土)「しんぶん赤旗」
坂口力厚生労働相は十八日の閣議後会見で、うつ病で自殺したトヨタ自動車の係長だった男性=当時(35)=の労災を認め、遺族補償年金の不支給処分取り消しを命じた名古屋高裁判決について、上告しない方針を明らかにしました。上告しない理由として、「地裁判決では厚労省の(労災判断の)基準が認められなかったが、高裁は国の考えを妥当と認めた」とのべました。
訴訟では労災の判断指針が争点となり、一審判決は「最もストレスに弱い者を基準とすべき」と判断。今月八日の高裁判決は処分取り消しを支持した上で、「業務による心身的負荷の程度などを総合的に判断するのが相当」と指摘しました。
判決によると、男性は設計技術者として一九八八年六月ごろから長時間勤務が恒常化し、うつ病にかかり同年八月に飛び降り自殺しました。
豊田労働基準監督署は九四年、業務とうつ病の関係が認められないとして、遺族補償年金などの不支給を決めていました。
高裁判決は一審判決と同様、「通常想定される範囲の同種労働者の中でも最も脆弱(ぜいじゃく)な者を基準とする」という考え方を採用している。これまで厚労省は健康な平均的な労働者を基準に心理的負荷の強度を判断してきた。厚労省は今回の高裁判決を謙虚に受けとめ、これまでの判断基準を直ちに改めるべきである。
日本共産党の八田ひろ子参院議員と瀬古由起子衆院議員は厚労省を訪れ、「判決を長時間労働の改善に生かし、遺族にきちんと謝罪すべきだ」と申し入れました。