2003年7月12日(土)「しんぶん赤旗」
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自民党長崎県連の元幹事長らに十一日下った有罪判決は、公職選挙法違反(特定寄付の禁止)や、政治資金規正法違反(虚偽記載)など、これまであまり光があてられなかった条項を適用し、罪に問うたことに大きな意義があります。
「特定寄付の禁止」とは、行政をカネの力でゆがめることを防ぐための規定。国や地方自治体と契約関係にある企業が国政選挙や地方選挙に関連して献金することを禁止し、政治家の側には寄付を勧誘、要求したり、受けてはならないとしています。
ところが、選挙のたびに自民党などが建設業界などを回り、公共事業をエサに票とカネを強制していることは全国どこでもおこなわれていることです。
政治家の側は、この献金を政治資金収支報告書に記載せずにヤミ献金として処理したり、公選法上の「特定寄付」にあたる違法献金を一般的な政治資金として収支報告書に記載するなどして、違法性を隠してきました。
自民党長崎県連も、金子原二郎知事が再選をめざした二〇〇二年二月の長崎県知事選を前に、ゼネコン各社から集めた選挙資金の一部を、政治資金規正法にもとづいて届け出、また一部を簿外処理し、幹事長機密費などとして飲み食いや海外視察の「餞別(せんべつ)」などに使っていました。(図参照)
しかし、今回の事件は、こうした政治資金の実態を捜査で明らかにし、その違法性を明るみに出したのです。長崎地裁判決も、「特定寄付を禁止した公選法の規定及び趣旨に真っ向から反する」と断罪しました。
浅田被告は判決後の記者会見で、「歴代幹事長がやってきたことをそのまま引き継いだだけ」と従来の主張を繰り返しました。まさに判決がいうように「県発注の公共工事に対する自民党県連の影響力を背景とする集金システム」だったのです。
今回の事件を契機として、これまで形式犯的扱いとされてきた政治資金規正法違反(虚偽記載)の摘発が相次いでいます。人材派遣業界などから約一億六千八百万円のヤミ献金を受け取っていた坂井隆憲衆院議員(自民党を除名)の起訴や、土屋義彦埼玉県知事の資金管理団体が一億一千三百万円の献金を隠したとして同知事長女の逮捕などです。
自民党長崎県連の場合は、「公共工事受注の見返りに選挙運動の資金の提供を求めたもの」(判決)であり、坂井議員の場合は、人材派遣業界への規制緩和などの便宜取り計らいへの謝礼、土屋知事の場合、“県政私物化”との関連など、それぞれ提供された資金の性格はことなっていますが、企業献金のわいろ性という本質は変わりがありません。
自民党、公明党など与党は、企業・団体献金の公開基準の緩和など、政治資金の流れをいっそう不透明にしようとしていますが、いまこそ企業・団体献金の全面禁止、当面、公共事業受注企業からの献金禁止に踏み込むときです。(藤沢忠明記者)