2003年7月12日(土)「しんぶん赤旗」
政府の青少年育成推進本部副本部長を務める鴻池祥肇防災担当相は十一日午前、少年犯罪への対策が話し合われた閣僚懇談会後の記者会見で、十二歳の中学一年生が犯行を認めた長崎市の幼稚園児誘拐殺人事件に関し、「親なんか市中引き回しの上、打ち首にすればいいんだ」とのべました。
鴻池氏は、事件について「親の責任だ」と強調。「(報道では)嘆き悲しんでいる家族ばかり映されて、犯罪者の親が映されていない。親や担当の先生、校長は全部前に出てくるべきだ」とのべました。
さらに「勧善懲悪や節度の思想が戦後教育であまりにも欠落している。そういう戦後教育を受けた人がパパやママになっている」と指摘。「こんなことをしたらえらいことになると、親に自覚させるためには、罪を犯した子どもの親は全部引きずり出すべきだと思っている」などと語りました。
鴻池担当相はこの後、記者団に対し「加害者の人権を擁護する必要はない。子どもが無理なら親が出てくるべき」とのべました。
小泉純一郎首相は十一日の参院予算委員会で、鴻池氏の発言について、「ご指摘のような発言をされたなら、これは不適切な発言、不適切な表現だと思う」とのべました。
少年犯罪被害者支援弁護士ネットワーク世話人・毛利正道弁護士の話 まったく時代錯誤の発言でことばもない。大臣の資格を疑う発言だし、少なくとも政府の青少年育成推進本部副本部長は、辞任すべきだと思う。
発言は、応報刑から教育刑へと発展している近代の刑罰についての考えを無視している。さらに環境の影響を受けて犯罪を犯す可能性が強い少年については、個人責任をとことん問う方向ではなく、加害少年を更生させていくという保護法制がとられている。これは世界的に百年単位で形成されてきたものだが、そうした少年保護法制にたいする初歩的な理解を根底から欠いた発言だ。
また一人親を悪者にしているが、子どもを孤立状態におき、自己肯定感を持てないようにしてきた学校や地域の責任、またそういう環境をつくった行政や政治の責任をも免罪するものだ。