日本共産党

2003年7月10日(木)「しんぶん赤旗」

国立大学法人法案に対する畑野議員の反対討論(大要)


 九日の参院本会議で日本共産党の畑野君枝議員が国立大学法人法案関連六法案に対して行った反対討論(大要)は、次の通りです。


 そもそも今通常国会の会期末は六月十八日でした。本法案は、本来ならば審議未了・廃案となっていたものです。会期が延長されても法案の問題点は深まるばかりであり、いっそうの解明が求められていました。それにもかかわらず八日、委員会審議を打ち切り採決を強行したことは将来に多大な禍根を残すことになります。このことにまず強く抗議するものです。

 百年に一度の大改革ではなく、百年に一度の大失敗につながる悪法であることが審議を通じて浮き彫りになりました。

 反対理由の第一は、「学問の自由」「大学の自治」を踏みにじるものだからです。本来大学が自主的に定めなければならない教育研究の「中期目標」を文部科学大臣が定め、「中期計画」を認可することは、大学の自主性・自律性を阻害し学問の自由を侵害します。

 文部科学大臣は「学問の自由を尊重する」「教育研究の内容には介入はしない」と答弁されました。

 ところが、文科省の介入は、法案が国会に提出される前の段階から始まっていることも明らかにされました。法案提出前の二月に、中期目標・中期計画についての事前ヒアリングが行われ、「中期目標・中期計画には具体の数値は書かず、抽象的な表現で方向を示す。ただし、部局資料には可能な限り数値目標を加える」という会議メモの存在は、二重帳簿的手法で介入する実態を浮かび上がらせました。

 また、「評価を想定した内容作りを文部科学省の方で指導してきている」という大学の改革推進委員会の議事録が明らかになり、文部科学省からの強い指示があったことをうかがわせました。さらに「学部等に固有の具体的事項を作成し、中期目標、中期計画の提出と同時に文部科学省に提出してください」という教育研究内容にかかわる具体的指示までなされていたのです。統制、介入の体制がすでにつくられているではありませんか。

 まさに憲法二三条「学問の自由は、これを保障する」に背反するものです。これでは大学の自主性・自律性の尊重どころか、大学支配そのものにほかなりません。二十一世紀にふさわしい大学改革に逆行するものだといわなければなりません。

 反対理由の第二は、憲法第二六条の「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」という「教育機会均等」の原則を侵害するからです。国立大学の法人化によって、財政責任を法人に押しつけ、世界一高い授業料をさらに引き上げ国民負担を増やす危険性があります。

 授業料がどのように設定されるのか、その基準はいまだに示されていません。一方では、文部科学省から官僚の天下りの可能性がある理事、監事あわせて五百八十人が新たに新設され、その給与約九十六億円については明確な基準が示されています。

 文部科学省は、「我が国の国立大学は学生に経済状況に左右されない進学機会を提供するなど重要な役割を果たしてきており」、「こうした役割は法人化後におきましても維持される必要がある」と答弁しました。しかし、大学ごとの運営費交付金が現在の予算措置の水準にとどまり、外部収入が増えず、天下りだけが増えるとなると、授業料を上げざるをえなくなる事態となるのは火を見るより明らかではありませんか。

 反対理由の第三は、各大学が、文部科学省内に設置される国立大学評価委員会のみならず、総務省による評価を受け、その結果が予算配分に直結し、廃止・民営化を含めた生殺与奪の権を文部科学省が握ることで、大学の自主性・自律性、地域で果たす役割が根本的に否定されるからです。地方の政治・経済、文化・教育を支えてきた地方国立大学が存亡の危機にさらされます。

 さらに一夜にして十二万人が本人の同意なしに非公務員になる問題。学長の極端な専断体制と教授会を軽視し大学の自治を無視できる大学運営の問題。法人化によって違法状態を大量につくりだす労働安全衛生法適用問題等々。その解明はいまだ尽くされていません。

 以上の法案について、新聞の意見広告で、世界的な言語学者であるマサチューセッツ工科大学のノーム・チョムスキー教授も、「大学とその教官の独立性を損ない、それらを官僚的決定に従属させ」、「世界における日本の役割の重要性を考えるなら、世界全体にとっても極めて有害なもの」と発言されています。まさに正鵠(せいこく)を射た指摘ではありませんか。

 最後に指摘したいのは、政府・文科省による国会を無視した法人化準備作業はあまりにも異常であり、その事実を隠すため答弁は横暴極まるものだったということです。

 遠山敦子文部科学大臣をはじめ文科省は委員会審議で、失言、暴言を繰り返し、審議がたびたびストップしました。大臣の発言が文教科学委員長に「不穏当」と指摘される前代未聞の事態もありました。そういう大臣が、「中期目標」を決定し、改廃措置権、生殺与奪の権を持つなど言語道断です。

 大学改革というのならば、国の責任で高等教育予算の大幅増額、経理の公開、財政の公正な配分のために独立した大学財政機関を確立し、自由で創造的な教育研究を保障すべきです。

 いまだに法案には大学人の合意はありません。法案に対する批判の声が日増しに広がり、文教科学委員会は傍聴者で埋め尽くされました。今後も広がることでしょう。

 本法案の廃案こそ、わが国の教育研究の前進・発展を保障する確かな道であることを強く主張し、反対討論を終わります。


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