2003年7月10日(木)「しんぶん赤旗」
「武力攻撃の標的にされる」「人道支援は非軍事で行うべきだ」――九日の参院連合審査会で、日本共産党の緒方靖夫議員は、イラク特措法案にもとづく自衛隊のイラク派兵の問題点を二つの柱で指摘しました。
緒方氏は、イラクで最大の問題は治安といわれており、占領米軍を攻撃の標的にしている旧フセイン政権残党勢力は「国民から遊離しているごく一部の勢力といいきれない情勢が生まれつつある」と指摘しました。
国民が占領軍に不満、怒りをもつ背景として、(1)フセイン時代よりも暮らしが悪くなっている(2)不法な戦争にもとづく外国の占領は屈辱となっている(3)米英軍がイスラム文明を無視した振る舞いをしている――ことをあげました。
影響力をもつ(イスラム教)シーア派の指導者も「占領軍はイスラムの敵」と反米闘争宣言を出すなど、「占領軍が掃討作戦を強め、治安を強化すればするほど、国民の反発は強まるという構造ができつつある」とのべました。
さらに残党勢力が「米側に立つものは、国籍を問わず、どこにいようと、攻撃の対象とする」と宣言し、実際に米軍から訓練を受けているイラク人警官が殺害されていることを紹介。「占領軍だけでなく、それに味方する同盟軍も(軍事攻撃の)標的にされる。自衛隊が派兵されれば、行くところで標的にされる危険性は否定できない」と追及しました。
小泉純一郎首相は否定できず、「可能性を論ずればきりがない」と開き直りました。
つづいて緒方氏は、「イラクでいま求められているのは、専門技術・知識を伴う援助、非軍事を前提とした大規模な人道支援だ」と指摘したうえで、「軍事攻撃の標的となる自衛隊が人道支援活動に参加することは、支援活動そのものの妨げとなる」と強調。そのことを国連が作成した人道支援についての指針にそって明らかにしました。
この指針は「複雑な緊急事態における国連人道活動を支援するために軍事・非軍事の防衛力を使用することに関する指針」と題するもの。イラクの事態を受けて三月に改訂草案が作られ、六月二十六日に確定。改訂作業には日本も加わっています。
「指針」は人道支援の原則として「人道、中立、公平」とあげ、ことに「中立」について、「人道支援は、政治、宗教、イデオロギー上の紛争で敵対行動やどちらかに味方することなく、行われなければならない」と指摘しています。
この原則が決められたのは、「軍隊が関与することで人道支援が危険になり、遅れるという問題が起きた」(緒方氏)からであり、その結果、「人道支援は非軍事で行うというのが国連の原理・原則」(同)となり、これを厳守することが強く要請されています。
「指針」は、軍隊が人道支援を行えば、「支援従事者が敵対者の直接の標的とされる」だけでなく、援助を受ける側も「支援のアクセスがたたれ」「敵対者の直接の標的とされてしまう」ことを明記しています。
緒方氏はこうした国連の原則を示したうえで、「米占領軍を支援する自衛隊が人道支援に従事すれば、人道支援を進めている人たちの活動を妨害することになる」と指摘。「自衛隊がくれば中立性が損なわれ、活動が危険になり、困難となる」という現地NGOの人たちの声も紹介し、人道支援は非軍事でという「国連の原則・常識を踏まえるべきだ」と強調しました。