2003年7月4日(金)「しんぶん赤旗」
日本のコメの生産・流通のあり方を抜本的に改悪する「改正」主要食糧法が六月二十七日の参院本会議で、自民、公明、新保守の与党三党の賛成多数(共産、民主、社民、自由の野党各党は反対)により可決・成立しました。“農業つぶし”へ引き金を引くこの悪法が実施(来年四月施行)されると、どうなるのか、その内容を改めてみました。(今田真人記者)
最近の米価は、二〇〇二年の全銘柄平均で六十キログラム当たり一万六千九十九円(自主流通米価格形成センターでの入札結果)にまで下がりました。
これは、一九九五年度から始まったWTO(世界貿易機関)協定によるコメ輸入(ミニマム・アクセス米)の増大の影響が色濃くうかがわれるものです。(図)
この間の米価暴落は、同法案の国会審議でも明らかになったように、日本の多くの稲作農家の経営を危機に陥れ、自殺者まで出しています。
ところが、「改正」法は、この危機に対して、国内のコメの需給調整や価格形成に対する政府の管理・助成責任を放棄し、コメの流通を「市場原理」にいっそう委ねて、生産者米価の下落を野放しにするものです。
「(この法案が通ったら)半分以上の農家は倒産する」(国会の参考人質疑で出された農民代表の発言)といわれるように、稲作を中心とする日本農業の危機はいっそう深刻になります。
とりわけ、現在、まがりなりにもコメの安定的流通に貢献している「計画流通制度」を廃止し、「市場原理」に委ねることは重大です。
コメは日本の主食であり、その価格安定と安定的供給は、国の本来果たすべき義務です。
ところが、「改正」法は、「自主流通米価格形成センター」を改名・改組するとともに、コメを売買する業者の「登録制」を「届け出制」に変えて、基本的にどんな業者も売買に参加できるようにしました。投機的取引として有名な「先物取引」の禁止規定まで法律から削除。コメの品質・安全などの農産物検査の義務を撤廃しました。
「改正」法は、大商社や量販店など、利潤追求本位の大企業のコメ売買への参入・支配を公然と許すものです。それは、農家に対する買いたたき、あるいは、価格操作や買い占め・売り惜しみなど、国民の食生活に重大な被害をもたらすことになりかねません。
しかし、「改正」法の施行は来年四月であり、近く予想される国政選挙で、この悪法を推進した勢力に審判を下すなら、その実施を食い止めることも可能です。
求められているのは、日本共産党が主張しているように、なによりも国がコメの価格と需給の安定に責任を持ち、大企業のコメ流通支配を許さないことです。
具体的には、米価暴落の最大の原因であるコメ輸入の大幅削減・廃止や、コメの再生産を可能にする価格保障、農家の所得補償をすることです。
農協組織は、「改正」法には反対しませんでしたが、稲作経営安定対策の維持や過剰米対策を通じた米価の下支えなど、「改正」法の枠内にとどまらない要求を掲げています。「改正」法のもつ危険な内容を広く知らせるとともに、日本のコメを守る共通要求に基づく運動を強めることが求められています。