日本共産党

2003年7月3日(木)「しんぶん赤旗」

重大局面の国立大学法人法案

広がる批判に何らこたえず


 国立大法人法案は、与党が審議打ち切り、採決をねらう重大局面を迎えています。しかし、審議で浮かび上がった問題点は、まったく解決されていません。怒りと批判はひろがる一方です。

「国家統制」

◆計画も評価も

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法人法案の廃案をと銀座をパレードする大学人=6月7日、東京

 もっとも不安が集中しているのは、大学への文科省の統制がこれまで以上に強まるのではないかという点です。

 法人化後は、各国立大学の教育研究や大学運営の六年ごとの中期目標を文科相が定めます。それを達成するための中期計画も、文科相が認可します。そして評価も文科省内の評価委員会が行い、その結果が予算配分に反映されるのです。しかも、文科省が法案を先取りして、各大学に目標・計画の作成をこと細かに押しつけてきた実態も明らかにされています。

 共同通信の全国国立大学長アンケートでは、評価が適正に行われるのかを懸念する声が75%にも達しました。

 各紙社説にも「大学運営の細部について、はじめから終わりまで役所がこれだけ関与する制度は、先進国には見当たらない。国立大学の法人化ではなく、『文科省立大学』への移行ではないかという声が出てくるゆえんである」(六月十二日付「日経」)「省庁と特殊法人との“主従関係”に似て、従来以上に強い文科省の介入も予測される」(六月二十四日付「神戸」)などの論調が現れています。

◆大量天下り?

 法人化に伴い、各大学の役員が文科省官僚の天下り先になるのではないかという点も批判を集めています。六月二十六日付「東京」は、国立大のモデル校といわれる筑波大では、役員は全員学外者を予定し、うち数人は官僚出身者を見込んでいると報じています。

 日本共産党の畑野君枝議員は一日、大学に新たに理事が四百六人、監事が百七十八人おかれ、役員報酬は総額で年約九十六億円になることを明らかにしました。そして「天下りは大学の自主性・自律性の阻害にもつながる。『天下りしない』とはっきり言うべきだ」と迫りました。

 遠山敦子文科相は「行政経験者を選任したとしても、あくまでも学長の考えに基づくものだ」と述べ、「天下りしない」とは明言しませんでした。

学費値上げ

 一日付「毎日」に載った法人法案廃案を訴える意見広告で、茨城県の主婦が「学ぶためにかかる学費が高額になれば、学ぶこと自体をあきらめなければなりません」と、法人化で学費が上がることへの不安を述べています。各地の学生自治会の学生大会でも、学費値上げへの不安から法人法案に反対する決議が相次いで上がっています。

 共同通信の学長アンケートでは、10%が「授業料は全般として上がる」、40%が「学部間で差がつき、上がる学部もでてくる」と回答。六月二十九日付「朝日」の学長アンケートでも、国立大九十六校中二十四校が「全体として上がる」、二十一校が「学部ごとに差をつけることに賛成」と答えています。文科省は「授業料の標準額と一定の範囲を文科省が定め、その範囲内で各大学が自主的に定める」としており、値上げを否定していません。


8日に参院委採決狙う

 参院文教科学委員会は二日、理事懇談会を開き、国立大法人法案を八日に採決することを決めました。

 与党側は当初、三日採決を主張していましたが野党の反対にあい、「採決に応じられないなら三日は委員会を開かず、八日に質疑、採決を」と提案しました。

 日本共産党の林紀子理事は「八日であってもまだ審議は尽くされていない。採決前提の日程には応じられない」と主張。民主党、国会改革連絡会(自由党など)は「質疑時間を十分にとり、しっかりした答弁でこれまでの疑問にこたえたなら、採決はやむをえない」との立場を表明しました。


研究阻害、廃案にすべきだ/介入や値上げは許せない

日本科学者会議事務局長

片平 洌彦(きよひこ)さん

 国立大学法人法案では、文部科学大臣が大学の中期目標を定めると規定されています。研究が国の管理下に置かれ、自主的研究が阻害されていく大きな問題です。

 当面国は大学にお金を出すといっていますが、法案には、長期借り入れや債権が発行できると書いてあり、国立大学の民営化の方向が追求されています。国は大学を管理するが、財政責任を持たないというのは、重大です。

 また、学長や一部の役員に権限が集中する仕組みがとられようとしています。これは大学の民主的なあり方に逆行するものです。こういうスタイルの大学がつくられると、それが公立・私立大学に波及することが危ぐされます。

 こうした法人化を許すことはできません。廃案にすべきです。

全日本学生自治会総連合委員長

大塚健太郎さん

 今年の全国大会で「国立大学法人化は、大学にたいする国の責任を大幅に後退させ、授業料の大幅値上げや学部間格差導入をもたらすもので、学生生活を守る立場から許せない」という決議をあげました。

 ユネスコ高等教育宣言は、“学生の要求が高等教育改革の基本に据えられるべき”であるとうたっています。大学が学生の願いにこたえ「学術の中心」(学校教育法)として発展することは21世紀の日本社会に貢献することになります。

 私たちは、学費の値下げ、奨学金制度の拡充、カリキュラム・施設の改善など、学ぶよろこびを実感できる大学づくりを求めています。ですから、文科省が大学の教育・研究に介入し、学費のいっそうの値上げをもたらす国立大学法人法案は廃案にすべきだと訴えるものです。


 国立大学法人法案 全国八十九の国立大学の設置者を法人とする法案。法人化後は、各大学の中期目標を文科相が定めます。中期目標を達成するために各大学が作成する中期計画も文科相が認可し、内容変更を命じることもできます。法人の運営は、学長と学長が任命する理事(人数は二―八人)でつくる役員会で決定します。業務の監査にあたる監事(二人)は文科相が任命します。


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