2003年7月1日(火)「しんぶん赤旗」
政府は、イラク特別措置法案にもとづいて米英占領軍を支援する自衛隊は「非戦闘地域」で活動するから、憲法には違反しないと繰り返しています。しかし、政府でさえ、いまなお「法的に見れば、戦争状態は継続している」(石破茂防衛庁長官)というイラクで「非戦闘地域」を設定するなどもともと不可能です。
法案は、自衛隊の活動について「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域」(非戦闘地域)で実施するとしています。
政府はこれまで、海外での自衛隊による武力行使とともに、他国の武力行使と「一体化」する活動も憲法上許されないとしてきました。このため、法案では、自衛隊の活動を「非戦闘地域」に限り、米軍などの武力行使と「一体化」しない「制度的な担保」(石破防衛庁長官)にしているというのです。
しかし、イラクでは、ブッシュ米大統領の「戦闘終結宣言」後も、旧フセイン政権残党によるとみられる襲撃などで米英軍に連日のように死者が出ています。「イラク全土がいまだ戦闘地域」(米英連合軍のマキャナン現地司令官)というのが実態です。
政府自身も、「北部とか西部のような地域において、組織的な集団があって、それが戦闘行為とみなされるような行動を起こしているかもしれない」(福田康夫官房長官)と答弁。南部地域についても「現在、南の方が安全だ、非戦闘地域だと断定しているわけではない」(石破防衛庁長官)としています。
事実上、イラク全土が「戦闘地域」である可能性を認めているのです。
ところが、政府は、自衛隊の派兵を強行するため、「ごまかしの論理」(日本共産党・市田忠義書記局長)をもちだしています。
法案でいう「戦闘行為」とは、「国または国に準ずる組織による組織的、計画的な国際紛争」(石破防衛庁長官)だという理屈です。
つまり、「国または国に準ずる組織」以外によるものや、組織性・計画性のないもの、一国の国内問題にとどまる紛争は「戦闘行為」ではないというのです。
政府は、こうした理屈によって、自爆テロやロケット弾攻撃、米英軍の軍事占領にたいする殺傷兵器を用いた宗教的な抵抗活動であっても、組織性がなかったり、「国または国に準ずる組織」以外によるものであれば、「戦闘行為」にはあたらないとしています。自爆テロやロケット弾攻撃が起こる地域も「非戦闘地域」になりうるというのです。
さらに、旧フセイン政権残党による襲撃であっても、政権の再興を目的としたものではない「夜盗、強盗のたぐい」は「戦闘行為」ではないともしています。
こうした地域に派兵される自衛隊が「もっていく武器に法的な制限はありません」(石破防衛庁長官)。審議の中で、自民党の議員は、重機関砲をそなえつけた指揮通信車や偵察警戒車といった重武装を求めています。
イラクでは、米英軍の軍事占領に国民の反感が広がっています。その軍事占領活動を支援する自衛隊は攻撃の対象にされ、攻撃されれば武力で反撃することにもなりかねません。それが、武力の行使や交戦権を禁止した憲法に違反することは明白です。