2003年6月28日(土)「しんぶん赤旗」
「有明海の漁業被害は諫早湾干拓事業に原因がある」として、漁民十九人からの原因裁定申請をうけた公害等調整委員会(加藤和夫委員長)は二十七日、裁定委員会第一回審問を開きました。佐賀、長崎、熊本三県から出席した申請人の漁民ら七人が、ノリやタイラギ漁の被害実態や多発する赤潮などの「有明海の異変」は諫早湾干拓事業の影響であると因果関係の早期認定を訴えました。
長崎県島原市の吉田訓啓さんは「諫早湾干拓工事が始まる前は漁獲売上高(年)千─千二百万円くらい。しかし、去年は四百万円。潮受け堤防を閉めた後には、いままで経験したことがない減少が起こるようになった」と不安を募らせます。
熊本県荒尾市のタイラギ潜水漁をしてき西川幸久さんは「(四年前に)タイラギが全滅。ギロチン(潮受け堤防の閉め切り)後、海の様子が激変した。潮の流れが遅くなり、海中にプランクトンが異常に増えてきた。漁民は追い詰められている」と語りました。
申請人代理人の馬奈木昭雄弁護士は「諫早湾干拓事業を境として従来と質的に明らかに異なる異変が生じている。国は、みずからが関与した研究成果すら否定しようとしている」と批判。農水省の主張はメカニズムを細かく分割し、ほんの一部をとりだしてまだ異論があるとごまかす「ニセ科学論争」と指摘し、裁定委員会に、現地調査や漁民の声を直接きくことを要請しました。