2003年6月28日(土)「しんぶん赤旗」
【ワシントン26日浜谷浩司】米エネルギー省は核兵器の起爆装置に使う「プルトニウム・ピット」の製造工場を新たに建設する計画で、その環境影響評価をめぐる公聴会が二十六日、五カ所の建設候補地の一つ、テキサス州アマリロを皮切りに開始されました。核兵器使用を含む先制攻撃戦略の具体化をめざす新たな動きとして批判が強まっています。
一連の公聴会は、建設候補地のカールスバード(ニューメキシコ州)、ロスアラモス(同)、ネバダ(ネバダ州)、サバンナリバー(サウスカロライナ州)と首都ワシントンと続きます。
プルトニウム・ピットは、既存の核兵器から回収して再利用可能。それにもかかわらず、大規模な製造工場を新設するのは小型核兵器の開発など、ブッシュ政権の新たな核軍拡方針を反映したものです。エネルギー省が五月に発表した環境影響評価案は、二〇〇一年の「核態勢見直し」(NPR)で、ピット製造工場の必要性が確認されているとして、「既存のプルトニウム部品の大規模な交換とともに、新たな設計に基づく(核兵器)生産に必要となる」と明記しています。
この政府の動きに対応して、米国内の反核団体や環境団体などは、ピット工場建設に反対する運動を強めています。二十四日には、全米規模の二十団体と核関連施設がある地域を中心にした百四の地域団体が共同で上下両院の各議員に、工場建設反対を求める公開書簡を送付しました。
アマリロでは、地元環境団体のエベリット会長が、二十五日付地方紙に掲載の論文で、新たなピット工場を「大量破壊兵器の製造工場として、世界で最も新しく、最も高価で、最も大きい」と指摘、近隣にあるパンテックス核兵器工場とさえ比較にならないほど「汚く、危険」で、工場誘致派がいう経済効果など「正当化しようがない」と警告しました。
反核団体などの公開書簡は、「既存の核兵器ピットを交換すべき理由はなく、(エネルギー省の)環境評価案もその必要性をまったく示せていない」と指摘しています。
公開書簡はまた、「数十億ドルもの税金を浪費し、地球規模での核不拡散の努力に脅威をもたらし、労働者と地域社会に汚染被害をもたらす」と、工場建設計画を批判しています。
同書簡をとりまとめた「核説明責任のための連合」の広報責任者ボブ・シェイファー氏は、「ブッシュ政権は、小型核兵器をはじめ、核兵器開発を新たに推進しようとしているが、ピット工場の建設はそのカギです。これは、核不拡散条約(NPT)で米国が法的に義務づけられた核軍縮の道に、真っ向からそむくものです」と語っています。