2003年6月27日(金)「しんぶん赤旗」
二十五日の衆院イラク特別委員会で日本共産党の赤嶺政賢議員がおこなった質問(大要)を紹介します。
赤嶺政賢議員 六月十三日から二十一日まで、日本共産党調査団の一員としてイラクに調査に行ってきました。私は出身が沖縄県です。あの沖縄戦の悲惨な体験者に囲まれて、米軍の直接の占領のもとで育ってきました。外国の占領軍に占領されている側の国民の気持ち、沖縄の立場をもってすればいろいろなことが見えるだろう。こういう思いも持ってイラクに出かけたわけです。
イラクに行ってみて、人道支援、復興支援が国連の機関や各国政府を通じていろいろな形で行われて、日本政府もまた国連に対する資金を提供している。こういうこともつぶさに見てきましたけれども、それでもなお今日、イラクが十数年にわたる経済制裁で疲弊し、今回の戦争で、そして戦争後の略奪でインフラが破壊され、イラクの国づくりには今後、国際社会の巨大な支援が必要だと。これは国連開発計画の代表の方がおっしゃっていたんですが、そういう国際社会の今後の巨大な支援をいっそう強化していかなければいけないなということも感じたわけです。
国連開発計画にも行きましたし、ユニセフ(国連児童基金)にも行きました。世界食糧計画にも行きました。雇用が非常に深刻で、おおよそ六割が失業だろう。このようにいわれている。その雇用対策のために、戦争や略奪で壊された公共施設や橋や道路の建設事業を雇用対策としてやっていこうという計画もありました。
それから、バグダッドのヨルダン大使に会ったのです。お隣の国ですから、イラクのことを大変心配している。何を心配しているかというと、夏場を迎えると五〇度を超えるようになってくる。水と電気と下水道、こういうインフラが復旧していない状態のもとで、五〇度を超えるようになってくると、これはもう伝染病の大流行が心配される。ヨルダンの大使は、こういう夏場に向かって早く電気や水や下水道の再建をしていかなければいけないということもいっていました。
それから、日本はODA(政府開発援助)予算を使ってイラクの十三カ所の病院を支援している。これは大変喜ばれているのですが、日本のNGO(非政府組織)が今度の戦争と略奪で破壊された建物の復旧、薬品の提供もやっています。同時に、経済制裁のもとで医者の、医療の技術の水準が上がっていない。今後のことを考えると、本当にイラクの国民にこたえるような医療技術を、あるいは医療のトレーニングを日本がもっともっと支援できるのではないか、そういう医療機関の支援の強化を訴えていました。私は、本当に日本という国はやることがたくさんあるなと思ったのです。
バグダッドから二百キロ離れた農村地区に行ったのです。農家の方とお話ししました。ことしから世界食糧計画がイラクの穀物を購入するようになったというのですね。ところが、農民はその価格に不満を持っている。国連の側は、虫が入っているから安い値段で買いたたいていると思うんです。
亜熱帯や熱帯の地域の農業というのは虫とのたたかいです。日本はその亜熱帯農業で、沖縄で虫とのたたかいで大きな成果を上げているのです。そういう農業生産、これに対する支援もできる。
ドイツやフランスの大使に会ったときは、当面の緊急対策だけではなく、これだけの広い国土を再建するためには、例えばイラクにどんな産業をおこしていくか、若者を建設現場や復旧作業での雇用対策だけではなく、どういう技術を身につけさせていくか。イラクの国民の独立した気概を尊重し、人格を尊重して、イラクの国民の力を引き出すことによってイラクの国づくりをしていく。こういう国際社会の支援というのが今後求められている。こういうお話をずっと聞いてきたのです。
ですから、日本の人道支援、復興支援というのは、今日やってきたものに加えてまだまだこの分野でたくさんやることがある。こういうことを感じたのですが、外務大臣は、これまでイラクのそういう復興支援に取り組んできた国連とのかかわりをもって、どういう考えをお持ちか聞かせていただきたいと思います。
川口順子外相 わが国に対しての国際社会の期待は大変に大きなものがあります。おっしゃったような人道面、医療、その他それぞれについて大変に大きな需要があります。それについてこたえていきたいと思います。
赤嶺 そういう方向の支援というのは本当に大事だと思うのですね。日本の国力を生かした貢献は、当面の復旧にとどまらず、イラクの国づくりにも大いに役立てるような技術も、科学も、文化も持っていると感じました。
NGOに聞いたら、地雷の撤去でも、日本がもっと頑張ってほしい。こうおっしゃるのですね。地雷の撤去というのは、はて自衛隊のことかと思いましたら、やはり日本の民間NGOは世界的にも地雷撤去で大きな役割を果たしているということをいっていました。
民間の仕事として非常に大きな仕事です。戦闘部隊がやる地雷の撤去というのは国土の再建につながるような撤去の仕方ではないということも、私はアフガンに行ったときに向こうの国連の担当の方から聞いてきたのですが、いろいろな意味で、民間の、あるいは政府の人道支援、復興支援の分野がたくさん残されていると思うのです。そういうところをまずわれわれは議論しなければいけない。
また、そういう復興支援でいえば、何も自衛隊を派遣しなくてもすむ問題なのです。何も新しい法律をつくらなければできないという問題でもないのです。現行法でもっともっとたくさんのことができる。こういうことを申し上げておきたいと思うのです。
赤嶺 人道支援、復興支援の面では大いな可能性を持ちながら、今何でこの法律(イラク特措法案)が問題になっているか。こういう分野の議論を排除したまま自衛隊がイラクの国に行く。こういうことになっているのです。
私たちが行ったときに、ちょうどイラクの人たちがデモをしていたのです。そのデモは、米軍占領当局のオフィスの前あたりの広場をずっと埋め尽くしていましたが、仕事よこせのデモなのです。それに対して、米軍の占領当局は発砲したのです。二人死んだのです。それから数時間後、ガソリンスタンドで米兵がイラクの国民に殺される。こういうことを聞きました。非常に不穏な空気が町全体に流れている。
夜はホテルで休んでいますと、銃声が聞こえてくるのです。翌日のニュースを見ると、やはり米兵が殺されたり、あるいはイラクの人が殺されているという事件が起きている。こういう面でも非常に不穏な状態なのですけれども、同時に、きょうここにこういう絵(パネルを示す)を持ってまいりました。これは占領後もイラク全域に広がる米英軍の死者数を示した六月上旬までの絵です。
きのうも六人、イギリス兵が襲われて死んでいます。戦闘で死んだ米兵が百四十数人。ブッシュ大統領が主な戦争は終わったと宣言してから亡くなった米兵の数は五十六人で毎日毎日ふえていっている。
そして、どういう地域で米兵が犠牲になっているかというと、イラク全土、イラク全域なのです。いわば犠牲が出ていない地域はない。総理はきのうの答弁でこのようにいっております。「散発的、局地的抵抗があるものの、戦闘は基本的に終了している」。主要な戦闘が終了したとはいっても、戦闘している地域が残っている。こういう認識でよろしいでしょうか。
小泉純一郎首相 散発的な戦闘が行われている地域はあると思います。
赤嶺 そういう戦闘地域があるわけですね。(米軍の)マキャナン(現地)司令官は五月二十九日の記者会見でこのようにいっている。「アメリカ兵に対する攻撃は犯罪行為ではなく戦闘行為である」。戦争は終わっていないと発言しているわけです。
イラク国民も、バグダッドでアメリカ軍の占領の最初の一週間はウエルカムムードがあった。ところが、今、日に日に反米感情が広がっている。反米感情によって米英占領軍当局は取り囲まれている。こういう状態です。非常に敵意が広がってきているということです。そういう地域に自衛隊が行くわけです。
(つづく)