2003年6月25日(水)「しんぶん赤旗」
北朝鮮問題を利用して日本共産党の名誉を棄損し著作権を侵害した謀略本の出版にたいし、日本共産党が提訴した裁判の第二回口頭弁論が二十四日、東京地裁民事四十七部で開かれ、被告の出版社側が謀略本の執筆者の本名を初めて明らかにしました。この人物は「柳原滋雄(やなぎはら・しげお)」という名前で、謀略本の背後にいた創価学会との関係が注目されます。
問題の謀略本は、東京・立川市の公団住宅に「本店」を置く「未来書房」(海野安雄代表取締役)が出版した『拉致被害者と日本人妻を返せ 北朝鮮問題と日本共産党の罪』(注参照)。
著者は「稲山三夫」という名前で出版されていますが、本の奥付には略歴も連絡先もいっさいなく、正体不明の人物。また、出版社についても、本に印刷された所在地には用件を取り次ぐ事務代行会社があるだけ。本にしるされた「ISBN」(国際標準図書番号)の番号からやっと「本店」所在地がわかるという謀略手法でした。
ことし三月、日本共産党は、著者の「稲山三夫」や出版元の未来書房を名誉棄損と著作権侵害で、さらに、日本共産党を中傷攻撃する本の電車中つり広告を掲出させたJR東日本などを名誉棄損で、それぞれ提訴。謝罪広告や損害賠償などを求めています。
この日の弁論で被告未来書房の代理人は、第一回口頭弁論で訴状さえ届かなかった執筆者の「稲山三夫」被告について、「稲山はペンネームで、本名は『柳原滋雄』。住所は『未来書房』が置かれていた立川市の公団住宅」であることを明らかにしました。
また、柳原氏と弁護士が接触したのは、「六月二十三日が初めてだった」ことも明らかにしました。著者の本名が判明したことで、謀略本裁判の被告全員が確認されたことになります。
未来書房の海野氏は、本紙の調べで、創価学会の地域幹部であることが判明。創価学会・公明党がこの本の大量買い取りをし、流通などにもかかわっていたことがわかっており、著者との関係も焦点になっています。
反共謀略本『拉致被害者と日本人妻を返せ 北朝鮮問題と日本共産党の罪』の著者「稲山三夫」の本名だった「柳原滋雄」とは、どういう人物か――。
未来書房の代理人によると、住所は、未来書房の「本店」であり、海野安雄氏の居宅だった東京都立川市の公団賃貸住宅の一室。しかし、二十四日午後にこの住所を訪ねると、二月末に海野氏が突然引っ越したあとに入居した人がいるだけで、「未来書房も海野氏も柳原氏も知らない」と答えました。
同じ、「柳原滋雄」という名前は、これまで反創価学会の活動をする山崎正友元創価学会顧問弁護士を、創価学会側の立場から攻撃した本『サイコパスの犯罪』の著者の本名として裁判で明らかになったことがあります。このときは著者名として「中田光彦」という名前が使われ、出版社は創価学会直系の「潮出版社」でした。
(注) 謀略本は、拉致問題をふくむ日朝問題の解決に大きな役割を果たした日本共産党を「殺人加担」などと中傷攻撃し、名誉を棄損したうえ、本の半分のページにわたって「赤旗」など日本共産党の著作物を盗用して著作権を侵害しました。