2003年6月22日(日)「しんぶん赤旗」
イタリアで十八日、国家最高位在職者に免責特権を与える法案が可決・成立し、ベルルスコーニ首相は現在直面している贈賄容疑の追及から救済されることになりました。国会の数の力で疑惑追及を封じ込め、保身を図るやり方には国内外から厳しい批判が沸き起こっています。
同法は、首相など国家最高位者五人に免責特権を与え、在職中に進行しているすべての裁判を中断する内容です。ベルルスコーニ首相に関しては、一九八〇年代の国営食品会社の民間売却にからんだ裁判官買収疑惑をめぐる裁判が進行中で、今年中にも判決が予定されていました。この裁判も中断されます。
同首相は「イタリアを(免責特権制度を持つ他の)欧州諸国と調和させる」として新法を歓迎しました。しかし進行中の裁判では首相に有罪判決が下る可能性が強いとされているため、追及逃れのための立法という見方が一般的です。
野党共産主義再建党のマシャ下院議員は審議で、「目的は一人の人物を優遇すること」「首相は筆舌に尽くしがたいごう慢を示した」と糾弾。イタリア紙レプブリカも「法律はもはや万人にとって平等というわけではない」と嘆きました。ローマからの報道によると、市内では審議と並行して廃案を求める集会が開かれました。
右派与党など法案支持者は、七月一日からイタリアが欧州連合(EU)議長国となることから、“議長国首相が任期中に有罪判決を受けて不都合が起きるのを避ける”ためとして同法を合理化しています。しかし欧州の主要メディアは、こうした策動が逆に欧州全体の民主主義を破壊すると反論しています。
英紙フィナンシャル・タイムズ十八日付は社説で「こうした見え透いた策略は民主主義の質に疑いを抱かせるもの」であり、「EU全体に暗雲を投げかける」と非難。仏紙ルモンドもこれまで同問題を何度も取り上げています。五月二十五、二十六日付の社説では、ベルルスコーニ首相の疑惑と人間的素質を問題にし、「七月一日からEUにとって特にデリケートな時期が始まる」と指摘しました。
(島田峰隆記者)