2003年6月22日(日)「しんぶん赤旗」
小泉内閣による不況の深刻化するなか、銀行が保有している株式を税金で買い取る銀行株式保有制限法改悪案の審議が衆院財務金融委員会ではじまっています。株価対策に国民の税金を注ぎ込もうという底無しの銀行支援策です。
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与党は、今年三月に日経平均株価が七千九百円割れする事態を受け、「緊急金融対策」として銀行救済策をまとめました。改悪案は、それを具体化したもの。現行の銀行等保有株式取得機構(理事長、山本惠朗・全国銀行協会元会長)による銀行負担の軽減が柱になっています。
機構は、銀行から買い取った株式を市場の値上がり動向を見ながら売却することになっていますが、株価は現在、多少戻しているものの、簡単に売却益をのぞめる状況にはありません。株式の値上がりが見込めず、売却損失が出たら税金で穴埋めされる仕組みになっています。
改悪案は、この銀行救済にさらに上積みする救済策を導入します。これまでは、株価下落による売却損リスクに備えるため、銀行が機構に株式を売却する際、売却額の8%相当額を機構に拠出していました(売却時拠出金)。売却損が出たら、この拠出金を取り崩して損失の穴埋めにあてるためです。政府も売却時拠出金を「国民負担に極力つながらないようにする」(柳沢伯夫元金融担当相)方策と強調してきました。ところが、この拠出金の負担さえ銀行にとって“重過ぎる”というのが与党の主張です。
改悪案では、売却時拠出金制度を全廃します。
政府は、株価低迷で銀行の経営が揺らぎ、金融システムが不安定になるため、銀行保有の株式売却を政府が支援して促進しなければならないと主張しています。
しかし、これまで日本の銀行は大企業の株式を大量に所有することで企業との強い結びつきをもち、同時にバブル時には、大量の含み益を享受してきました。
今回、「金融システムの安定」という理由だけで、すべての痛みを国民に肩がわりさせることは、あまりに身勝手です。経営が困難になれば、銀行の責任は第一義的に問われなければなりません。また、この間、政府は銀行への公的資金投入などさまざまな銀行救済策を取りつづけています(図)。しかし、銀行が自らの責任で経営を立て直そうという自律の精神を奪い、モラルハザード(倫理欠如)をさらに助長するだけです。
日本共産党の大門実紀史議員は五月二十九日の参院予算委員会で、「公的資金を入れて銀行の体力を強くするどころか、弱くしてきた」と、小泉内閣の銀行支援策の根本的誤りを追及しました。
「竹中プラン」に基づく不良債権処理の加速を推し進めて、失業・倒産を増やしつづければ、銀行経営を公的資金でいくら支えても真の金融立て直しにはなりません。
(佐藤高志記者)