2003年6月22日(日)「しんぶん赤旗」
日本共産党は二十一日午後、二日ないし三日の予定で、党本部で第七回中央委員会総会を開きました。会議の主要議題は、十一月に開催が予定されている第二十三回党大会に提案する党綱領改定案で、不破哲三議長が、幹部会を代表して、提案の報告をおこないました。
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不破議長は、改定案作成にあたって、(1)国民によりわかりやすい表現にするという前大会時の公約をはたすこと、(2)一九六一年に綱領を採択して以後四十二年のあいだの情勢の進展や党の理論・政治活動の発展を反映させることを、二つの主眼としたと述べ、この間、七三年、七六年、八五年、九四年に部分的な改定をおこなったが、今回は、二十一世紀の新しい情勢の諸特徴と日本共産党の政治的・理論的な発展を十分に生かした改定案の作成に努力した、と述べました。
改定案は五章十七節にわたり、今回はじめて章ごとの見出しがつけられました。これも、わかりやすくする努力の一つです。
不破議長は、改定案について、用語問題や理論問題にもふみこみながら、章ごとの逐条的な説明をおこないました。
日本の情勢の規定の問題では、これまでは、高度に発達した資本主義国であると同時にアメリカに支配された事実上の従属国となっているという情勢規定と、アメリカ帝国主義と日本独占資本を「日本を基本的に支配している」勢力と規定した支配勢力の規定との二つの命題が併記されていました。不破議長は、支配勢力についてのこの規定は、対米従属の打破と大企業・財界の横暴な支配の打破という闘争の二つの方向を整理してしめす点では、歴史的な意味をもったが、今後の変革と闘争をより正確につかむうえでは、いろいろな問題をもつことを指摘、改定案では、日本の情勢の二つの側面を明確にした命題を、文字通り、情勢規定の中心にすえてゆくことにしたことを、明らかにしました。
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なお、改定案では、天皇制についてよりたちいった解明がおこなわれました。まず、戦後の情勢の変化についての叙述および今後の民主的改革の内容の部分で、これまでの「ブルジョア君主制の一種」「君主制」などの規定をとりのぞくとともに、天皇は「国政に関する権能を有しない」として憲法条項の厳守を重視することを強調しています。不破議長は、「現在の天皇制を『君主制』と規定することは、日本の主権の所在をどう見るかについて誤解を残すことになる」と説明、イギリスなどの立憲君主制と日本の国家制度との基本的な違いを解明しました。
世界情勢の規定で、ほりさげた報告がおこなわれたのは、「帝国主義」の規定の問題です。綱領改定案は、今日の世界における「アメリカ帝国主義」の脅威をきびしく指摘していますが、不破議長は、報告のなかで、独占資本主義一般を「帝国主義」と規定した立場は、植民地体制が崩壊し、植民地支配を許さない国際秩序ができあがった現在の世界では、そのままでは妥当でなくなっていることを解明、綱領改定案では、「その国の政策と行動に、侵略性が体系的に現れるときに、『帝国主義』という呼称を用いるのが適切だ」とする立場にたっていることを、明らかにしました。そして、現在、アメリカの世界政策を「アメリカ帝国主義」と特徴づけたのは、この立場からであって、「アメリカについても、その将来を固定的に見てはいないこと」、日本にたいする支配は明らかに帝国主義的な支配だが、アメリカが将来、安保条約の廃棄を受け入れた場合には、アメリカが独占資本主義体制のもとでも、帝国主義的要素をふくまない日米関係の確立が可能だという展望を示しました。
第四章の「民主主義革命と民主連合政府」では、民主主義革命とそこで実行される民主的改革との関連が明確にされたことは、重要な点です。そして、これまでの綱領の、各階層・各分野の要求の一覧を示した「当面の行動綱領」にかわって、改定案では、「現在、日本社会が必要とする民主的改革の主要な内容」が、「国の独立・安全保障・外交」、「憲法と民主主義」、「経済的民主主義」の三分野にわたって明らかにされました。
そして、この革命を推進する統一戦線および統一戦線政府についても、綱領上の概念をより簡潔に整理し、革命の内容である民主的改革を実行する政府を「民主連合政府」として位置づけること、日本共産党と統一戦線の勢力が、国会の安定した過半数をえて、民主連合政府の樹立をめざすことが、政治の中心目標であることを、あらためて示しました。ここには、「議会の多数をえての革命」という路線が、マルクス以来の社会進歩の大道の一つであることを深く解明してきた、六〇年代以来の理論的な成果を反映しています。
一、戦前の日本社会と日本共産党 二、現在の日本社会の特質 三、世界情勢−−二〇世紀から二一世紀へ 四、民主主義革命と民主連合政府 五、社会主義・共産主義の社会をめざして |
最後の第五章「社会主義・共産主義の社会をめざして」では、不破議長は、この部分は全面的に書き換えたことを、まず明らかにしました。それは、現行の綱領のこの部分は、五〇年代の国際的な定説を前提にしたもので、マルクスの『ゴータ綱領批判』の共産主義社会発展の二段階説をとりいれたものでしたが、そこには、いくつかの大きな問題があったことが、マルクスの未来社会論についてのより根源的な研究のなかで浮き彫りになったからです。
改定案は、新たに明らかにされた見地にたって、用語の点では、未来社会を「社会主義・共産主義の社会」と呼称しました。そして、未来社会を、生産物の分配方式を中心に叙述することはやめ、生産手段の社会化を中心にすえて、それが人間社会にとって画期的な進歩をなす意義を、三つの角度から明らかにしました。
不破議長は、この問題の理論的な解明をおこなったあと、社会主義的な変革の道筋の問題で、改定案が、とくに強調しているいくつかの注意点を解説し、そのなかで、ソ連流の「社会主義」が、どこを踏み誤って、社会主義とは無縁な「人間抑圧型」の社会に変質したのかについても、言及しました。
最後に、不破議長は、二十一世紀における日本での未来社会の探究は、多くの世界的な流れが重なり合うなかで取り組まれるであろうことを力説。「日本の国民的な努力と英知の発揮によって、二十一世紀が日本国民の歴史にとって画期的な意義をもつ世紀となるであろうという展望とその確信、さらに第二十三回党大会にむけて私たちがつくりあげようとしている綱領改定案が、その有効な指針にならなければならないという展望と確信をもって奮闘したい」と、よびかけて、報告を結びました。