2003年6月21日(土)「しんぶん赤旗」
「これでは空約束ばかりではないか」。そう思わざるを得ないのが政府の雇用創出促進チームがまとめた「五百三十万人雇用創出プログラム」です。近く決定する「骨太の方針」二〇〇三に盛り込まれます。
小泉政権が二年前に打ち上げた雇用創出プランは「裏付けのない机上のプランだ。増えても不安定雇用ばかり」という厳しい批判を受けました。実際に、失業率は4%以下に低下するという想定とは逆に、この二年間に失業率ははね上がりました。
二年前もサービス部門を中心に五百三十万人の雇用創出を目標にしました。この間、サービス部門で約九十二万人増えたといいますが、年間百万人の目標からみれば半分以下でした。そればかりか、小泉「改革」が雇用を直撃し、他の産業では軒並み雇用が減り、雇用労働者全体では五十八万人も減少したのです。
失業率を見ても小泉政権発足前の二〇〇〇年の4・7%、失業者三百二十万人から、この四月は失業率が5・4%、失業者は三百八十五万人に激増しています。二年前の雇用創出プランの破たんは明りょうです。
政府がその失政の反省もなく、またもや「雇用創出型の構造改革」によってサービス分野を中心に約五百─六百万人以上の雇用創出が期待される、と裏付けもないプランを持ち出したのはあまりにも無責任です。
実際にプランの中身を見ても、その根拠はきわめて薄弱です。
例えば女性の社会進出や高齢化などで家事代行、食関連、資産運用など個人・家庭向けサービスが大幅増加するとして、百三十七─二百十三万人の雇用創出を見込んでいます。
女性が働こうと思っても仕事はパート、派遣、契約社員ばかりというのが現実です。年収百、二百万円台の雇用が増えて、どうして家事代行が十倍も増えるでしょうか。ましてや資産運用のサービスなど一部の高額所得者に限られます。
低賃金雇用を広げ、家計収入を低下させる政策ばかり進めながら、こんな誇大な雇用創出を見込むのはご都合主義もはなはだしいものです。
IT(情報技術)化や労働者派遣の拡大で二百万人前後の雇用創出を見込んでいるのも首をかしげます。
IT化の先頭に立つ電機大手や通信業界は、ITバブルの崩壊で二十万人規模のリストラを実行しており、「ITで雇用創出」の大宣伝は無残な破産を見たばかりです。
派遣労働者を製造現場に解禁するなど規制撤廃をしても、正規雇用を削減して派遣に代替するだけであり、雇用増加にはつながりません。
しかも今後、サービス部門で雇用が増えたとしても大半は低賃金の不安定雇用です。サービス部門は不安定雇用がもっとも多いからです。
重大なことは、この「五百三十万人雇用創出」を、小泉「改革」の加速で失業者をさらに激増させ、国民に痛みを押しつけるための免罪符にしようとしていることです。
実際にチームの座長を務める島田晴雄内閣特命顧問が「建設、農林水産、製造業の雇用が〇五年までに四百万人規模でまとまって減る。雇用が減る以上に増やす努力をしなくてはならない」(「東京」十一日付)とのべていることでも明らかです。
空前の失業地獄にある時、新たな失業を食い止め、不払い労働や長時間労働の是正による雇用拡大が不可欠です。国民生活に役立つ分野で臨時公的就労の場をつくるなど雇用政策の抜本的な転換が必要です。