2003年6月19日(木)「しんぶん赤旗」
与党三党は十八日、献金者名の公開基準を現行の年五万円超から例外措置として二十四万円超に引き上げ、同一企業から政党支部への献金上限を年百五十万円に制限することを柱とした政治資金規正法改悪案を国会に提出しました。
十八日に与党三党が提出した政治資金規正法改悪案は、議論の出発点だった公共事業受注企業の献金規制を棚上げし、逆に献金者名の非公開枠を拡大して匿名のヤミ献金を合法化する改悪です。
小泉純一郎首相は「企業も個人も名前を出したくない人はたくさんいる」(三月二十八日、参院予算委)と、狙いが企業献金の拡大だとあけすけにのべました。
改悪されれば、定期的な月二万円(年二十四万円)以下の口座振り込みによる献金者名を「例外措置」として政治資金収支報告書に記載せず、国民の監視の目を逃れることができます。
保守新党の松浪健四郎衆院議員の場合、かりに二十四万円以下を非公開にすると、暴力団関係企業から受けた献金(三年間で二十八万円)がすべて水面下に潜ることになります。
「政治とカネ」をめぐる献金規制の与党論議は、「ムネオ疑惑」が沸騰した昨年、公共事業受注企業からの献金に国民の厳しい批判の目が向けられたことが発端です。
日本共産党の佐々木憲昭衆院議員が、公共事業受注企業からの献金を禁止すべきだとただしたのに対し、首相は「政治資金の調達にどういう方法が適正かを含め実効性ある対応に努力したい」(二〇〇二年二月二十日)と答弁。野党四党は受注企業の献金規制法案を共同提出しました。
こうした出発点を見ても、公共事業受注企業からの献金規制は見送ったうえ、企業献金拡大へすり替える改悪案は、「規制」の名に値しません。
もともと、公開基準が年百万円超から五万円超に引き下げられたのは、細川連立内閣が自民党との談合で小選挙区制と政党助成制度を強行した「政治改革」関連法(一九九四年)のなかでした。
当時、引き下げの理由は▽企業・団体献金の制限の強化を図り、▽政治資金の透明性を高め、▽政治資金について規制の実効性を確保する―と説明されました。リクルート事件以来の政治腐敗に国民の怒りが高まり、政治資金の公開性向上や規制を打ち出した第八次選挙制度審議会の答申に沿ったものでした。
自民党は企業・団体献金に固執しながらも、「節度と透明性」を掲げて政治家の資金団体への企業献金に限り年五万円超で公開する案を出していました。今回の改悪はこの内容にも逆行します。
公明党は「政治改革」法案審議のなかで、自民党案に対し「過去に自民党自身が起こしてきた政治腐敗事件の原因が企業献金にあったという反省がまったく感じられない」(森本晃司衆院議員)と批判し、五万円超を公開する政府案に賛成しました。この経緯からも、今回の改悪に同意した姿勢が問われます。(古荘智子記者)