2003年6月15日(日)「しんぶん赤旗」
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自動車メーカーが、ディーゼル排ガスを低減する有効な技術を早くから開発していたのに、利潤追求とコスト削減を優先させ公害対策を怠ってきたことが、東京大気汚染公害裁判原告側弁護団の調査で明らかになりました。十月から実施される排ガス規制の実施を前に自動車メーカーの社会的責任が改めて問われています。
燃料噴射の時期・量・率を、コンピューターによって適切にコントロールする「電子制御燃料噴射装置」は、ディーゼル排ガスの有害物質・窒素酸化物質(NOx)や粒子状物質(PM)を低減する有効な技術の一つです。同装置は一九八一年ごろに実用化されました。メーカー七社のディーゼルエンジンの同装置を搭載した機種の比率は、八九年で22%、九四年で23%、九九年でも50%で、採用テンポはきわめて緩慢なものでした。
いすゞは、国内より厳しいアメリカの九四年規制をクリアするために米国向けの車には、最新の電子制御燃料噴射装置を採用、国内向けとは違う対応をしていました。裁判でのメーカー側技術者は「どんな技術を採用するかは販売戦略の問題。必ずしも公害対策だけが優先されるわけではない」と証言しました。
昨年十月の東京大気汚染公害裁判判決はメーカーの法的責任は認めませんでしたが、「開発された新技術を取り入れた自動車を製造、販売すべき社会的責任がある」としました。三月の東京都議会も「ディーゼル車対策における自動車メーカーの社会的責任に関する決議」を採択しています。
東京大気汚染公害裁判弁護団の小沢年樹弁護士の話 電子制御燃料噴射装置の占める役割はきわめて重要でした。そのことは規制の強化とともに、この装置を採用するエンジン機種が増えたことや、規制の厳しいアメリカ向けの車には搭載し、国内向けには載せなかったことからも明らかです。現在はほとんどの車に採用されていることからも、もっと早く積極的に対応すれば大気汚染状況の改善に役立ったはずです。
ディーゼル車対策共闘会議の西村冨佐多さん(全商連副会長)の話 メーカーが排ガス技術の採用を怠り結果として欠陥車を売りつづけてきたわけで、ユーザーは欠陥車を買わされた被害者です。メーカーが買い替え特需に沸く半面、ユーザーは資金繰りが苦しく廃業に追いやられています。メーカーの費用負担で解決してほしい。