日本共産党

2003年6月13日(金)「しんぶん赤旗」

主張

育英会廃止

奨学金の後退を許すな


 わが国の奨学金制度を支えてきた日本育英会を廃止する法律が、自民、公明などの与党三党と民主党の賛成で成立しました。

 奨学金制度は、来年度発足する「日本学生支援機構」という独立行政法人に引き継がれます。独立行政法人とは、国の支配下で「経済効率」優先の運営を強いられる組織です。国会審議を通じ、このまま見過ごせば奨学金制度の後退が深刻な形で始まることが明らかになっています。

高校奨学金の拡充を

 その端的な例が、連帯保証人が二人立てられない奨学生から「信用保証料」を新たに徴収することです。単親家庭などの困難な条件にある学生から、さらにお金をとろうというのでは「奨学」の名が泣きます。

 文部科学省は、事前の説明で保証料は月二千円から三千円としていましたが、国会審議では「(収支の)バランスをとってもらわないと」と答弁し、それ以上になる危険もうかがわせました。

 高校生奨学金は新組織に引き継がれません。不況のもと、高校奨学金の受給者はこの四年間で三割以上も増え、十二万二千人にのぼります。一方、親の倒産・失業・賃金カットで泣く泣く高校を中退する生徒の増加という痛ましい現実もあります。そんなときに、国がこの分野の奨学金を投げ捨てることは、なんと冷たい仕打ちでしょうか。

 政府は「高校の奨学金は都道府県に移管する」といいます。しかし、審議ではっきりしたのは貸付資金が一定期間、国庫から交付されることだけです。各地で高校生奨学金の業務に当たっている育英会の職員が都道府県職員になれるのかどうかも不明です。高校奨学金の水準を維持するためには、各県の努力とともに国の責任ある財政措置が不可欠です。

 さらに、大学院生の奨学金返還免除の制度が大幅に切り縮められる危険があります。現在の制度では、研究・教育職に就いた場合に返還が免除されます。奨学金を受けている院生の三割が免除されています。法律はそれを廃止して、その代わりに「優れた業績をあげた大学院生を対象とした卒業時の返還免除の制度」を導入するといいます。

 国会での、日本共産党の畑野君枝参院議員の質問に、文科省は「優秀な人材というのは三割もおるのかと、せいぜい一割じゃないかというような指摘も実は財務当局からきておる」(河村副大臣)と答弁しました。これでは返還免除者は三分の一に削られ、教育の機会均等がいっそう掘り崩されます。

 大学院まで奨学金を借りれば、数百万円もの借金にのぼります。研究・教育職へ就けば返還を免除されることは、経済的な困難を抱えながら大学教員や研究職を目指す若者にとって「命綱」ともいうべき制度でした。東大での説明会で院生らは「資金面で研究者への道をあきらめざるを得なくなることが多くなる。優秀な研究者が育たず日本の技術力が低下する」「お金がないと学べない社会では科学の発展は望めない」と発言しています。

たたかいはこれから

 しかも何をもって「優秀」と認めるかの基準も不透明です。短期的に目に見える業績しか認めないのであれば、スケールの大きな研究者、とくに基礎的部門の研究者が育たなくなる土壌となりかねません。

 どの問題をとっても、具体的なつめはこれからです。新組織発足と来年度予算編成にむけて、奨学金の後退を許さず、拡充を求めるたたかいを大きく発展させましょう。


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