日本共産党

2003年6月11日(水)「しんぶん赤旗」

労基法改悪

裁量労働制を拡大

「ただ働き」野放しの恐れ


 労働基準法改悪案の審議が参院で始まり、与党は会期末までのごく短時間の審議で採決に持ち込もうとしています。衆院での審議を通じ、改悪点の一つ、裁量労働制の拡大は「ただ働き」を野放しにする危険が浮かび上がりました。厚労省みずから進めているサービス残業規制の方針にも逆行するもので、拙速な審議があってはなりません。

対象事業場を拡大

 裁量労働制は、実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ労使で決めた時間だけを「働いたとみなす」制度です。「八時間労働」という原則を崩すことになるので、無原則に導入しないように現行制度では歯止めをかけています。企画業務型の裁量労働制の導入は、「本社機能をもつ事業場」に限られていました。改悪案はこの規定を削除し、ほかの事業場にも拡大することをねらっています。

 厚労省の松崎朗労働基準局長は、「わが国の企業活動をみすえ、ぎりぎりのところで要件を緩和したものだ」(四日、衆院厚労委)と説明。企業の活動をやりやすくすることが目的だと認めたうえ、「基本的には労使委員会できちんとやっていくことで、労働者にとって不利益にならないようにということは守られるのではないか」と、労使委員会が歯止めになるかのように弁明しています。

導入手続きを緩和

 ところが改悪案は、この歯止めもはずそうとしています。これまで裁量労働制の導入にあたって必要だった労使委員会設置の届け出を廃止し、さらに、労使委員会全員の同意が必要としていたものを「五分の四」に引き下げます。日本共産党の山口富男議員は、「労使委員会設置の意味さえなくすものだ」と指摘しました。

厚労省方針に逆行

 裁量労働制は、実際に働いた労働時間を管理することにはなりません。そのため、つねに「サービス残業、不払い労働が拡大されるのではないか」との懸念がつきまとい、監督行政の厳格な実施がとくに求められます。

 衆院で日本共産党の小沢和秋議員は、現在でも労使委員会で決めた「みなし」の残業時間にたいし月二十―三十時間多く残業し、その分の賃金は払われていない「ただ働き」の実態を告発。「みなし労働時間と実際の労働時間のギャップを是正するよう、指導するか」とただしました。

 ところが松崎労基局長は、「ずれが生じたら、企業内や労使委員会で対応してもらう」と答弁。“労使まかせ”で、実態に目をつぶる姿勢です。

 これは厚労省みずからの方針にも反しています。五月二十三日に発表した「サービス残業解消対策」のための「要綱」と「指針」では、「賃金不払残業は、労働基準法に違反する、あってはならないもの」と規定。「要綱」で、「的確な監督指導を実施」し、悪質なものについては、「厳正かつ積極的な司法処分を行う」と明記しています。

 労使委員会にいっさいを任せ、指導・監督はまともに行わない――。改悪案が示す裁量労働制拡大は、厚労省がすすめるサービス残業是正に逆行するものです。裁量労働制の実態、是正を求める労働者の声を闇の中に封じてはなりません。(丸山聡子記者)


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