2003年6月11日(水)「しんぶん赤旗」
深刻な大気汚染の根絶へ緊急な対策が求められています。国のNOx(窒素酸化物)・PM(粒子状物質)法と東京都など首都圏の自治体の条例に基づく規制が今年10月から実施されます。しかし、これによってディーゼル車ユーザーは、使用期間を残したまま低公害車への買い替えを求められます。長びく不況下、資金繰りに苦しむ業者の中には、廃業を強いられる人も。中小・零細企業や“一人親方”のユーザーは、「ディーゼル車対策共闘会議」をつくり「メーカーの責任で規制をクリアする後付け装置を開発してほしい」と切実に訴えています。
国の、NOx・PM法によると、規制地域内(八都府県)で、NOxとPMの規制値をクリアしない車は、一定の猶予期間後に車検が通らなくなります。
東京都など一都三県の条例は、PMの削減を目的にし、PM減少装置を装着しない車は、規制地域内の走行ができなくなります。これは規制地域内を走行する全国のディーゼル車が対象です。
国の車種規制によってどれだけのディーゼル車が不適合車になるのか。五月二十日の衆院決算行政監視委員会で、国土交通省が日本共産党の瀬古由起子議員に明らかにしました。規制地域八都府県(埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・三重・大阪・兵庫)で約三百二十二万台と膨大な数です。(別表)
規制値をクリアするためにはどうすればいいのか…環境省にたずねてみました。「NOxとPM両方を減少させる使用過程車用の後付け装置は技術的に難しく、いまのところない。規制が始まっても新車代替しかありません」との答え。
結局、ユーザーは一台何千万円もする、トラックやダンプを買い替える以外にないのです。
三菱総合研究所は二〇〇二年十月に出した調査結果で、ディーゼル車ユーザーに十分な支援が行われない場合、「中小規模の企業を中心に三千九百社(全運送事業者の7%)前後の廃業が発生、一―二万人程度の雇用に影響が及ぶ」と警告しています。
全日本建設交運一般労働組合関東ダンプ東京分会の小太刀研自書記長は、「環境の保護・保全は当然のことで規制の強化に反対するものではありません。公共工事でのダンプ一日の運賃相場は、三万円(国の積算基準は五万円)。労務費に一万八千円、燃料費に一万円とられれば、新車の買い替えなど無理だ」といいます。
また、東京のダンプの登録台数は“一人親方”と呼ばれる「自家用車」が二千九百一台に対して「運送事業者」は百三十社(二〇〇〇年度、国交省調べ)にすぎません。圧倒的多数が、「車を持った労働者」です。
同分会の調べでは、ダンプの八割以上が初年度登録から九年以上経過した使用過程車で、平均年収は、二百六十三万円と劣悪な状況になっています。
平沼赳夫経済産業相は「技術的な潜在力のある日本としては不可能なことではない」(衆院予算委員会分科会で日本共産党の塩川鉄也議員への答弁)と述べました。
扇千景国土交通相は「補助も大事ですけれども、一番大事なことは、NOxとPMの両方を低減させるという装置を開発する、これが私は早急に迫られている大事なことだと思います」と後付け装置開発の促進を強調しました。(衆院決算行政監視委員会分科会で瀬古議員への答弁)
自動車業界は、大量の排ガスを出す「欠陥車」ともいえるディーゼル車を大量に生産してきました。それが「買い替え特需」ともいえる好景気に沸いています。ユーザーは自動車メーカーの社会的責任を厳しく追及、後付け装置の開発を求め交渉を繰り広げています。