2003年5月31日(土)「しんぶん赤旗」
|
「目先の利益」を最優先する企業の雇用戦略が若年フリーターを増加させていることが、三十日に内閣府が発表した「国民生活白書」(二〇〇三年版)で浮き彫りになりました。
白書によると、働く意思があっても正社員としての職を得ていない若年フリーター(十五歳から三十四歳。パート、アルバイト、派遣労働者、正社員への就業を希望する失業者など)は、一九九〇年の百八十三万人から年々増加し、二〇〇一年には四百十七万人に達しています。
若年人口(学生、主婦を除く)の五人に一人はフリーターという状況になっています。
三十歳前半でもフリーターという人が〇一年で八十万人。八九年の二・七倍にものぼっています。
フリーターのうち、正社員になりたいと考えている人の割合は72・2%。もともとパート・アルバイト(派遣を含む)を希望している人は14・9%でした。
人件費削減のため企業側は正社員採用を抑え、パートやアルバイト、派遣労働に移しかえる動きを強めています。
政府・財界は労働法制を改悪し、不安定雇用を拡大する雇用流動化戦略をとっています。
白書は「経済の低迷が長引き、企業が雇用の戦略を見直しているために、現在は雇用環境が悪化していることから、やむをえずフリーターになっている人が多い」と指摘しています。
また、フリーターの増加は、日本経済を担う若年の職業能力の向上に支障をきたし、経済成長の制約になることや、少子化問題を深刻化させるとしています。
「将来の日本を担う若年は輝きを秘めた原石だ」−−。三十日に内閣府が発表した「国民生活白書」は、激増する若年フリーター問題でこう指摘しています。
ところが、この言葉とは裏腹に、小泉内閣は、大企業のリストラを応援し、雇用の最大の受け皿である中小企業を不良債権処理加速策で倒産に追い込むという“失業拡大政策”をとっているのが実態です。
しかも、政府は財界の要求にそって労働法制を改悪し、使用者の「解雇権」の明記や、有期雇用・派遣労働を拡大することを狙っています。これでは、ますます不安定雇用問題を深刻化させ、“青年の使い捨て”が広がるばかりです。
青年に働きがいのある仕事を保障するために政府がやるべき課題は、ひたすら人件費を削ることを最大の目標に「目先の利益」しか考えない大企業のリストラを規制し、その力にふさわしい社会的責任を果たさせることです。また、フリーターと正社員との間で賃金や休暇、福利厚生など労働条件で不当に差別されるという不公正をなくすことが重要です。
サービス残業の解消や国民生活に必要な教育、保育、介護、医療分野などで雇用の拡大策を進め、青年失業者、新卒未就職者にたいし職業訓練を保障する方向に雇用政策を転換することです。
(金子豊弘記者)