日本共産党

2003年5月28日(水)「しんぶん赤旗」

サービス残業根絶・厚労省「指針」

企業は時間管理の対策とれ


 二十三日に厚生労働省がまとめた「サービス残業解消対策指針」は、二〇〇一年四月の同省「四・六通達」の内容を発展させ、サービス残業の温床として最大のネックになっている自己申告制を「やむを得ない場合に限られる」とし、使用者の労働時間の管理責任を改めて明確にするなど、ただ働きをなくすためにいっそう踏み込んだ内容となっています。

労働時間把握を求めた「通達」

 厚労省は一昨年四月、労働時間を適正に把握する「四・六通達」を出しました。大企業職場などでまかり通る長時間・過密労働が過労死・過労自殺まで引き起こし、大きな社会問題となるなか、労働時間の把握は使用者の責任であることを、明記したものでした。

 サービス残業という重大な企業犯罪をやめさせるために、職場の労働者の勇気ある告発や日本共産党職場支部の活動と国会論戦が大きな役割を果たしました。「通達」以降、わずか一年半の間に六百十三社、七万一千三百二十二人の労働者を対象に八十一億三千八百十八万円の未払い残業代を払わせました。

 これらは企業がすすんでサービス残業是正をしているのではなく、追及され逃れられなくなったから支払ったものです。それどころか、国会で日本共産党の筆坂秀世参院議員が追及した軽四輪大手のスズキにみられるように、悪質なサービス残業隠しが後を絶たず、是正はごく一部にとどまっています。

労働時間管理のシステム確立を

 「通達」後の実態も踏まえて、今回の「指針」は、サービス残業をやらせない企業にしていくために「通達」の順守を改めて求める一方、労働組合にたいしてもチェック機能の発揮を求めています。

 さらに、企業の責任で適正に労働時間管理を行うためのシステムを確立し、定着させる必要があるとして、出退勤時刻や入退室時刻の記録などを具体的に示しています。

 始終業時刻の確認と記録は、使用者自らの現認やタイムカード、ICカードなどの客観的な記録を原則にし、労働者による自己申告制は「やむを得ない場合に限られる」と例外措置であることを改めて強調しています。自己申告制は時間管理をあいまいにして、サービス残業の温床になってきたものです。

チェック体制整備を提起

 「指針」は、仕事のすすめ方にまで踏み込み、サービス残業を前提とした業務がおこなわれているような場合は、業務体制や業務指示の見直しを求めています。

 また、人事考課でも、サービス残業をした労働者も、これを許した管理者も評価しないように徹底することなども盛り込んでいます。

 加えて、責任体制の明確化とチェック体制の整備を提起。指揮命令系統にない管理者の配置でダブルチェックを行うことや、企業トップが直接サービス残業の情報を把握できる投票箱を設置するなど、労働時間管理の経営責任を要望。労働組合にも相談窓口の設置など必要な対応を求めています。


サービス残業解消対策指針(要旨)

 厚生労働省がまとめた「サービス残業解消対策指針」の要旨を紹介します。

 【趣旨】

 賃金不払残業は、労働基準法に違反する、あってはならないものである。

 こうした観点から、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき基準」(平成十三年四月六日付け基発第三三九号。以下「労働時間適正把握基準」という)を策定し、使用者に労働時間を管理する責務があることを改めて明らかにするとともに、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置等を具体的に明らかにした。

 しかしながら、賃金不払残業が行われることのない企業にしていくためには、職場風土の改革、適正な労働時間の管理を行うためのシステムの整備、責任体制の明確化とチェック体制の整備等を通じて、労働時間の管理の適正化を図る必要がある。

 【労使に求められる役割】

 (1)労使の主体的取組

 労使は、労働時間の管理の適正化と賃金不払残業の解消のために主体的に取り組む。

 (2)使用者に求められる役割

 賃金不払残業を起こすことのないよう適正に労働時間を管理しなければならない。

 (3)労働組合に求められる役割

 本社レベル、事業場レベルを問わず企業全体としてチェック機能を発揮して主体的に賃金不払残業を解消するために努力する。

 (4)労使の協力

 労使からなる委員会(企業内労使協議組織)を設置して、実態の把握、具体策の検討及び実施、具体策の改善へのフィードバックを行う。

 【労使が取り組むべき事項】

 (1)労働時間適正把握基準の遵守(じゅんしゅ)

 使用者は賃金不払残業を起こすことのないようにするために、労働時間適正把握基準を遵守する。

 また、労働組合も、労働者に対して労働時間適正把握基準の周知を行う。

 (2)職場風土の改革

 賃金不払残業が存在することはやむを得ないとの労使双方の意識(職場風土)をなくしていく取組を行う。

 (1)経営トップ自らによる決意表明や社内巡視等による実態の把握

 (2)労使合意による賃金不払残業撲滅の宣言

 (3)企業内又は労働組合内での教育

 (3)適正に労働時間の管理を行うためのシステムの整備

 (1)適正に労働時間の管理を行うためのシステムの確立

 出退勤時刻や入退室時刻の記録、事業場内のコンピュータシステムへの入力記録等、あるいは社内アンケートの実施等により賃金不払残業の実態を把握した上で、関係者が行うべき事項や手順等を具体的に示したマニュアルの作成等により、「労働時間適正把握基準」に従って労働時間を適正に把握するシステムを確立する。

 特に、始業及び終業時刻の確認及び記録は使用者自らの現認又はタイムカード、ICカード等の客観的な記録によることが原則であって、自己申告制によるのはやむを得ない場合に限られる。

 (2)労働時間の管理のための制度等の見直しの検討

 賃金不払残業の存在を前提とする業務遂行が行われているような場合には、業務体制や業務指示の在り方にまで踏み込んだ見直しを行う。

 労使委員会において、勤務実態や問題点を具体的に把握することが有効と考えられる。

 (3)賃金不払残業の是正という観点を考慮した人事考課の実施

 賃金不払残業の是正という観点を考慮した人事考課の実施(賃金不払残業を行った労働者も、これを許した現場責任者も評価しない)等、現場レベルでも徹底する。

 (4)労働時間を適正に把握するための責任体制の明確化とチェック体制の整備

 (1)各事業場ごとに労働時間の管理の責任者を明確にしておく。特に、賃金不払残業が現に行われ、又は過去に行われていた事業場については、ダブルチェックを行うなど厳正に労働時間を把握できるような体制を確立する。

 (2)相談窓口を設置する等により実態を積極的に把握する体制を確立する。企業トップが投書箱(目安箱)や専用電子メールアドレスを設けることなどが考えられる。

 (3)労働組合においても、相談窓口の設置等を行う。


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