2003年5月27日(火)「しんぶん赤旗」
国会で審議中の職業安定法・労働者派遣法案について、公共職業安定所の職員から投稿が寄せられましたので、紹介します。
◇
五月二十二日、職安法・派遣法「改正」法案が衆院を通過しました。この法案は、派遣業・民営職業紹介業の規制をほとんど取り除く内容で、成立するとこれから国会で審議される労基法の「改正」と相まって、派遣・短期の不安定な労働者が急増し、無権利で低賃金・長時間労働が拡大すると心配しています。
一九九五年、日経連は、日本型雇用慣行である終身雇用制と年功序列賃金を否定する「新時代の『日本的経営』」を発表しました。雇用を短期化し、労働者を自由に使い捨てする担保として、どうしても必要なときに必要なだけ労働者を補充できるシステムが必要であり、民営職業紹介事業、労働者派遣事業の規制緩和(原則自由)を政府に要求しました。政府は、この日経連の要求に応え、九七年に民営職業紹介事業を、九九年に労働者派遣事業を原則自由化したのです。
以来、企業リストラの嵐が吹き荒れ常用労働者が解雇される一方で、派遣で働く労働者が急増しました。あわせて派遣業者も急増したため、派遣契約が競争入札に掛けられ、派遣料金の引き下げが労働条件の引き下げとなって派遣労働者に転嫁され、さらに同じ職場で働く常用労働者の労働条件まで引き下げるようになっています。
今回の派遣法「改正」法案は、物の製造の業務にも労働者派遣を認めること、紹介予定派遣を制度化し、派遣先が派遣労働者を事前に面接することを認めることなど、事業所が派遣を一層使い勝手よくしていることから、この法律が成立すれば派遣で働く労働者がさらに増えるのが目に見えています。
職安法「改正」法案は、貸金業などが職業紹介事業を行うことを禁止している条項を削除するとしています。小口金融の厳しい取り立てが社会問題になっていますが、こうした業者が職業紹介事業を行うことになれば、債務者を強制的に紹介し、賃金を前借りさせ返済させたり、賃金の差し押さえ・ピンハネ、強制労働が起きるのではないかと懸念しています。
派遣労働も多くの民営職業紹介も有期雇用であり、常に雇い止めの不安を抱えながら働いています。繰り返しやってくる契約期間満了日に契約を更新してもらうために、例えば有休があっても休まないとか、少々の残業は手当てを請求しないとか、労働者の権利さえも放棄して働くのです。
労働者が、不安を感じながら、労働者の権利さえも放棄して働かなければならないような雇用形態を増やすのが政治でしょうか。この国で最も多数を占める労働者が、安心して働ける雇用環境を整備するのが政治や行政の責任ではないでしょうか。また、企業にとっても、労働者が安心して働いてこそ、企業発展の展望も開けるのではないでしょうか。
最近は、公共職業安定所の求人にも派遣業や業務請負業からのものが増え、有期求人が増えています。公共職業安定所の窓口で、職業相談を通して労働者の過酷な労働実態に触れるにつけ、心が痛みます。