日本共産党

2003年5月27日(火)「しんぶん赤旗」

派遣期間3年/製造現場にも解禁

企業都合、歯止めなし

派遣法改悪 衆院審議でくっきり

傍聴席は満席、与党席はガラガラ


 労働者派遣法・職業安定法両改悪案が衆院で可決され、二十七日から参院厚生労働委員会で審議が始まります。衆院の審議で明らかになった問題点は──。

常用雇用化が筋

 改悪の一つ目は、派遣期間の上限を現行の一年から三年に延長するというものです。

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労働法制の改悪に反対して全労連などが国会前で座り込み=21日

 労働者派遣法は成立から十八年がたちますが、常用雇用が中心で、派遣労働は「臨時的・一時的な労働力」という考えが基本になっています。常用雇用の正社員の代わりに派遣労働者を使用していくことを防止することが同法の趣旨となっています。このため、一九九九年の改悪でも、代替防止策として一年の上限を定めました。

 日本共産党の山口富男衆院議員は、「なぜ三年に延長されるのか」とただしました。厚労省側は“基本は変わっていない”と表明。戸苅利和職業安定局長は、派遣先企業の57・7%が「受け入れ期間が一年では短すぎる」と答えている厚労省調査を紹介。派遣先と派遣労働者双方の要望が強いことを上限延長の理由にしました。しかし、東京都の調査では、派遣労働者の37・2%が「できれば正社員として働きたい」(東京都の調査)と答えています。

 山口氏はこの調査にふれ、「派遣期間を延ばしたいと派遣先が考えるなら、派遣労働者を常用雇用に変えるのが筋ではないか」とのべ、三年への延長に反対しました。三年に延長すれば、低賃金・不安定雇用の期間が長くなるだけです。

 政府は、派遣期間を決める際、派遣先に労働者代表からの意見聴取を義務付けていることから、企業にとって都合のいい常用雇用から派遣労働への代替促進は防げると説明しています。山口氏は、「意見聴取とは、意見を聞くだけか、同意か」と質問。戸苅局長は、「最終的には経営判断。(労働者の)同意とまではいかない」と答弁。企業利益が優先され、法案に盛り込まれた意見聴取義務が、なんら歯止めにならないことが明らかになりました。

偽装請負を追認

 改悪の二つ目は、これまで禁止されていた「物の製造」現場への派遣を解禁することです。製造現場の派遣労働が禁止となっていたのは、「常用雇用代替を加速度的に拡大し、技術・技能の継承が不可能になりかねない」という理由からです。

 小沢和秋衆院議員は、「すでに労働者の派遣が『請負』を偽装して広範に行われている。今回の改悪はそれを追認することになる」と追及しました。戸苅職業安定局長は、「偽装請負を解消して、適正な請負か適正な派遣であるような指導をしていきたい」と答弁。「偽装請負」の合法化になることを事実上認めました。

違法状態野放し

 衆院の審議の中で、派遣労働の違法状態が指導もされず、野放し状態になっていることが浮かび上がりました。

 十六日の参考人質疑では、深刻な実態の紹介に委員席から驚きの声が上がりました。「妊娠したら解雇を通告された」「三カ月、一カ月の契約更新で六年以上同じ仕事で就労した」

 山口議員は、北海道では派遣先・派遣元の八割で、契約書を作成していない、派遣期間の限定を超えて派遣しているなど法令が守られておらず、厚労省の指導・監督も口頭指導だけ、改善状況の確認すら行われていないと追及。「文書による指導、改善状況の追跡調査をやるべきだ」と追及しました。厚労省は、指導監督体制の再構築を約束せざるを得ませんでした。

 日本の雇用形態を大きく変える法案の審議に、傍聴席は満席になりました。しかし、与党席はガラガラ。定数四十五人の委員会なのに、過半数を大きく割り込み、委員をかき集める場面もありました。

 委員会の審議時間は、参考人質疑を含め、わずか十六時間足らず。短時間の審議で衆院を通過させた与党の暴挙に、全労連、連合の両事務局長もそれぞれ抗議の談話を発表。委員会で可決された二十一日の夜には、四千人の請願デモが国会を取り囲みました。

 二十三日からは、使用者による解雇の自由を盛り込んだ労働基準法改悪案の審議も、衆院厚労委員会で始まり、労働法制の改悪は重大な局面を迎えています。(丸山聡子記者)


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