日本共産党

2003年5月27日(火)「しんぶん赤旗」

廃止・民営化も国の勝手!

大臣に逆らったら罰金?

教員、学生、親にとっての国立大学法人法案


 国会の審議で明らかになった国立大学の法人法案の問題点が関係者に大きな波紋を呼んでいます。大学人、学生、国立大学に子どもを通わせる親から話を聞きました。(浅尾大輔記者)

戦前にもない学問の統制

 法案は、国立大学を法人にすることで、国の財政責任を後退させる一方で、各大学が独自に定めるべき学問研究などの目標を国(文部科学大臣)が決めるというもの。国は、大学の目標の達成度を評価して、それを各大学の予算に反映させます。

 国会での石井郁子衆院議員の質問で、文科大臣は大学の目標の変更命令を出すことができ、大学が、それに従わない場合には、過料を科すことができることが明らかになりました。

 教育学者の植田健男・名古屋大学教授は「戦前でもあり得なかったこと」と憤ります。

 「法案は、憲法二三条の『学問の自由』を否定し、教育行政の『不当な支配』の禁止をうたう教育基本法一〇条の明白な違反です」

 さらに「一〇条二項で、行政は教育に必要な『諸条件の整備』をする任務を負うが、それは研究者の自由の確保と、国がお金の力で教育に介入することの禁止も含む。国側は『大学の意見を配慮する』と答弁するが、ごまかせない法律内容です」といいます。

 いま、植田教授らは教育法学会の会員に「同法案の廃案を訴える」声明を呼びかけ、賛同者が次々と広がっているといいます。

国の「評価」で存在を左右

 国会の審議では、文科大臣が評価にもとづいてとる「所要の措置」が、「法人としての存続の必要性、廃止、民営化を含めて、業務、組織の見直しを行うこと」までおよぶことが明らかになりました(総務省答弁)。国の評価によって国立大学の廃止や研究そのものが中止されるおそれも出てきました。

 「常識では考えられない法案ですよ」

 こう話すのは、浜林正夫・一橋大学名誉教授です。

 「(廃止されかねない)地方大学は、地域の人々と経済に大きな影響をもち、帯広畜産大のBSE(牛海綿状脳症)研究など一流の大学も多い。法人化は、学問に不可欠な自由な発想を委縮させ、経済の活性化にもつながらない」

学費年20万円値上げ試案も

 「末の娘が他県の国立大学にいっています。月八万円の仕送りは、自立した上二人の子どもが食費を入れてくれるのでなんとか出せる。学費が上がったら? 途中で放り出せませんから、ホント、頭痛いです」

 埼玉県にすむ主婦(53)は、不安げに話します。

 今年の国立大学初年度納付金は、八十万円をこえました。今年二月、大学生協連が発表した大学生の生活実態調査の結果によると、下宿生の一カ月の収入は十三万三千七百九十円。一九九六年以降最低になりました。小林正美専務理事は記者会見で「不況が学生生活にマイナス影響を与えている」と分析しました。

 文科省は、法人化で、現行の授業料五十二万八百円から二十万円値上げする幅をもつ試案をまとめ、各大学も検討を始めました。

 所得階層ごとの大学生の輩出率を推計した論文「高度成長期以降の大学教育機会」(近藤博之・大阪大学教授、『大阪大学教育学年報』第6号)によれば、九〇年代に入って低所得家庭の子どもが大学に入りにくくなっているということがわかります。同論文で近藤教授は「家庭の経済状態で機会が異なる仕組みはやはりおかしい」と指摘しています。


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