2003年5月27日(火)「しんぶん赤旗」
日本共産党の池田幹幸議員は二十六日、参院有事法制特別委員会で、米国によるアジア太平洋地域での戦争で米軍の「来援基盤」づくりのために、日本の民間企業・機関が強制動員させられる危険性を追及しました。
池田氏がまず取り上げたのは、日米軍事協力の指針(ガイドライン)にある「日本に対する武力攻撃が差し迫っている」事態と、有事法制が発動される「武力攻撃予測事態」との関係です。
ガイドラインは「武力攻撃が差し迫っている」事態が、アジア太平洋地域で米国が戦争を起こす「周辺事態」から波及して発生するケースがありうることを明記しています。
池田氏の追及に、石破茂防衛庁長官は、この「武力攻撃が差し迫っている」事態と「予測事態」が「同一の場合もある」とのべました。米国がアジア太平洋地域で起こす戦争が波及して、「予測事態」が起こりうることを認めたものです。
池田氏が次にただしたのは、「武力攻撃が差し迫っている」事態=「予測事態」での米軍への軍事支援の内容です。
ガイドラインは、この事態で「米軍の来援基盤の構築、維持」を日本が行うことを明記しています。
池田議員 「武力攻撃が差し迫っている場合」に日本が行う「米軍の来援基盤の構築、維持」とはどういうものか。
守屋武昌・防衛庁防衛局長 米軍の部隊が戦力を発揮するためには、例えば航空機を迎え入れる場合は運用する飛行場、船が入る場合には港湾、その活動を維持するためには必要な物資の輸送、補給があり、そういう米軍の戦力発揮を維持する機能と考えている。
つまり、「予測事態」でも、こうした「米軍の来援基盤の構築、維持」が行われることになります。
池田氏は実際にも、米軍が本格的に戦争に踏み出す前には、大量の兵員、装備、物資を事前に展開し、膨大な要求をしてくることを具体例をあげて指摘しました。
──イラク戦争では、米英軍の兵員二十五万人、航空機千百機、戦車などの戦闘車両千二百五十両、艦船五十隻といった兵員・装備が展開(「日経」三月二十日付夕刊)。
──九四年に在日米軍司令部が、八つの民間空港、六つの民間港湾の使用、膨大な資機材の保管場所など、日本に千項目以上要求していたこと。
池田氏は、「来援基盤の構築、維持」、つまり、日本を拠点とする兵たん・補給作戦の実施を、有事法案で今後整備するとしている「米軍支援法」で定めるのかとただしたのに対し、石破長官はうなずいて認めました。
池田議員 航空会社が(米軍物資輸送を)いやだといったら、どうするのか。強制できる法律を別につくることを想定しているのか。
石破長官 強制するかしないかを含め今後の検討課題だ。
膨大な「来援基盤の構築、維持」の一例として、池田氏がとりあげたのは、二〇〇〇年八、九月に防衛施設庁が、航空三社に、米国防総省の物資輸送資格の取得を要請していた問題です。三社は航空機の安全が担保できないなどの理由から、資格取得が困難だと回答しています。
しかし、有事法制ができればどうなるのか。
「武力攻撃事態法案」は、指定公共機関に指定した民間企業・機関が戦争協力を拒否すれば、首相が指示権を発動し、さらに拒否すれば、政府が直接実施できる規定になっています。この仕組みは、別に定める法律で動き出すことになっています。
また政府は、航空会社の指定公共機関への指定を検討する考えを示しています。
増田好平内閣官房審議官は、首相の直接実施の仕組みについて「指定公共機関等に代わって対処措置を実施するものだ」「指定公共機関の従業員、資機材を使って実施するということではない」と答弁しました。
しかし石破長官は、今後整備する別の法律で強制も含めた支援を検討する考えを表明。池田氏は「強制することもありうるというのは、重大な答弁だ。撤回すべきだ」と批判しました。