2003年5月25日(日)「しんぶん赤旗」
東北旧石器文化研究所の藤村新一・元副理事長による旧石器発掘ねつ造問題を検証してきた日本考古学協会(会長・甘粕健新潟大名誉教授)特別委員会の小林達雄委員長(国学院大教授)らは二十四日、東京都内で記者会見し、藤村氏が関与した百六十二遺跡でねつ造があったこと、藤村関与の「前・中期旧石器」の遺物・遺跡は、「学術資料として使うことはできない」との見解を示しました。さらに、「(検証に)一区切りついた」とし、検証がほぼ終了したことを明らかにしました。
二○○○年十一月のねつ造発覚後、○一年五月に設置された特別委は、関係自治体などと協力し、藤村氏が関与した百八十四遺跡のうち百七十八遺跡を検証。これまでに石器約四千点を調べ、百六十二遺跡をねつ造と判断しました。
百六十二遺跡のうち、日本に前期旧石器時代が存在することを決定付けたとされた座散乱木遺跡(七六年から発掘、宮城県岩出山町、昨年十二月に国の史跡指定解除)など三遺跡については「一部にねつ造があった」とし、残り百五十九遺跡は全体がねつ造と判断しました。
未検証の六遺跡に関しては、特別委が自治体などの検証に協力していくといいます。
また、藤村氏のねつ造は一九七二年ごろから始まった可能性が高く、「長期的、系統的、広範囲におこなわれていた」との見方を示しました。
日本考古学協会(甘粕健会長)は二十四日、朝日新聞社にたいし、同紙夕刊コラム「素粒子」の記事について会長名で抗議、文書回答を求めました。
二十日付「素粒子」は、弥生時代開始年代がさかのぼるという見解に関連して、「考古学と農政は覆されるためにある。どだい大雑把にしていい加減だから、弥生期の始まりは500年さかのぼり…つじつま合わせてとぼけるほかないか。」と書いたもの。
協会は、弥生開始年代が長い研究の蓄積であるとし、新見解を大きくとりあげた同紙が一方で、「考古学界の動向を揶揄(やゆ)する意見を公にし、国民に考古学にたいする誤った考え」を広めるとしています。