日本共産党

2003年5月18日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

地元産木材を自治体が応援

住宅に補助 林業を守る


 安い外材が輸入され、林業の衰退、森林荒廃がすすんで久しいなか、最近、県を中心に、地元産木材を使って住宅を建てると助成する自治体が広がっています。構造材の半分以上を地元産木材を使うなど、一定の条件を満たせば利子補給や低利融資、補助金支給などおこなうというもの。森林を守り、地元業者を支援し、雇用を創出するという、地域活性化策です。長野県と鳥取県を見てみました。


最初に県内で制度化

県も昨年融資始める

長野・木曽福島
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 長野県では昨年度から、県産材50%以上使用の木造住宅に、融資金利が当初五年間無利子、五―十年目まで2%になる「県産材型」など四種類の融資制度を始めました。居住水準の向上と住宅産業の振興、県産材の利用促進などを目的にしたものです。

 しかし昨年度は、全体で二百九十五件の融資目標にたいして、申し込みが三十九件(三月末現在)にとどまったことから、今年度は融資対象をリフォーム工事にも拡大したり、住宅金融公庫からの融資を適用要件からはずすなど、より利用しやすいよう改善しました。

 これまで、農政林務委員会(当時)で地元産材の活用促進などを求めてきた日本共産党の藤沢のり子県議は、「森林組合など関係業界はじめ、地域振興、雇用拡大を求める声は切実です。制度の利用状況なども調べ、利用度を高めるよう求めていきたい」と話しています。

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町の助成制度を活用し、建設が進む住宅=長野・木曽福島町

 一方、共産党員町長の木曽福島町は、長野県内で最初に助成制度をつくった町です。

 四年前から、工事請負業者が木曽郡内であり、かつ(1)町内の下請け業者が七者以上かかわった場合は融資額の2%、たとえば二千万円借りて建てると四十万円補助し、(2)七者未満は1%補助する―というものです。主要部分に木材を用いた住宅の新増築やリフォームも含め、住宅資金として金融機関の融資額が五百万円以上二千万円以内など十一項目の条件を設けています。

 「地元なのでお互いの顔が見えるのでいいですね。お客さんも意見が出しやすいようだし、何かあってもすぐ駆けつけることができる」(建設業者)と好評です。

 同制度は、一九九八年三月に初当選した田中勝已町長が、同年九、十二月町議会で実施を表明し、翌年十月から実施しました。

 「いやあ時間かかりました。どこにも見本がなかったから」と田中町長。半年間の全町的な議論のすえ、「建設業者からガス・水道、畳、石屋さんまで、町内の関連業者のほとんどが加わる」木曽福島町木造住宅推進協議会(木推協)を発足させ、制度の運用主体として大きな役割を果たしているのが特徴です。

 「単なる補助制度ではなく、運動としての体制があること。そこが一番大事なんです」と田中町長。発足から三月末までの申請は四十件。木造新築総数の約半分がこの制度を活用しています。

 木推協の事務局がある町商工会議所の木戸稔経営指導員も「地域産業の振興と雇用、景観保全に役立っている」といいます。

 田中町長は「2%というのは発足当時、消費税が3%から5%に上がった負担増の部分です。助成率や額、借り入れしないで家を建てた人への配慮、地元材の活用など関係者の意見を聞いてさらによい制度にしていきたい」と話しています。

 (青野圭記者)


町内業者使用が条件

森林の町 活性化図る

鳥取・日南
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 鳥取県内では昨年度から県が補助制度をスタートさせるとともに、日南町でもことし四月から「町産材を使用して住宅や納屋や作業場などを建築すれば、最高四十万円の助成をします」という制度がスタートしました。

 日南町は合併しないで「単独・自立」を決定した中国山地の稜線に位置する人口六千八百人の町です。面積は県内の自治体でもっとも広く、三百四十平方キロもあり、九割が森林です。

 昨年の十二月議会に町内の林業家から「町産材の利用促進のために住宅建築へ助成制度を」という陳情が提出され、全会一致で採択し、新年度予算で実現しました。私も議会で、森林の町にふさわしい具体的な施策を急ぐべきだと、主張してきました。

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多くの買い手でにぎわう日南町の材木市場

 この制度の特徴は、日南町で育った木材を伐採し、町内の製材業者で製材し、町内の大工さんによって建築されることが最低限のルールとなっていることです。地元産材を十立方メートル以上使用すると、一立方メートル当たり一万円、最大で四十立方メートル、四十万円を助成します。今年度は四棟分を予算化しています。

 安い外材の輸入攻勢で林業の衰退と山林の荒廃がすすむなか、少しでも農山村の経済を支えようということです。

 一方、県の制度は、延べ面積が八十―二百八十平方メートルで、構造材の五割以上が県産材、外壁周りの柱が十二センチ角以上などを条件に、一律六十万円を補助するというものです。日南町民は、県の制度と町の制度の両方を受けることができます。

 在来工法による建築は、手間がかかりかえって工賃が高くつくという声もあります。しかし住宅政策は、町の文化と産業を結びつけるものであり、地域を大切にする教育にもつながる力をもっています。

 安心して末永く住みつづけられるということが基本ですから、風土にみあった材料と工法がいちばんです。

 (久代安敏日南町議)



各県の地元産材助成

 地元産木材を使った住宅建設への助成制度は、長野、鳥取のほかにも、約三分の二の府県で実施しています。

 補助金など 秋田(乾燥秋田杉の柱材最大九十本を無償提供)、群馬(乾燥杉柱材を最大百十本無償提供)、新潟(工務店、大工さんのPR活動への助成)、石川(一棟につき三十万円)、山梨(最大二十七万二千円)、岐阜(大黒柱を提供)、和歌山(最大四十万円)、島根(一律三十万円)、岡山(一律五十万円)、徳島(住宅金融公庫の融資額に応じて十五―六十万円)、高知(合計七十万一千円を限度に三つの制度)、福岡(標準型最大十六万円、長寿命型最大三十二万円)、熊本(乾燥杉柱材を最大九十本無償提供)、大分(最大三十七万円)、宮崎(乾燥杉柱材を最大八十本無償提供)、鹿児島(十五〜二十万円)

 低利融資 秋田、栃木、埼玉、新潟、富山、三重、滋賀、京都、兵庫、徳島

 利子補給 岩手、山形、茨城、群馬、岐阜、静岡、山口、愛媛、佐賀、宮崎



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