2003年5月17日(土)「しんぶん赤旗」
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自分の通信の秘密が侵されたと知ったとき−−
「言葉が出なかった。電話を手にするのも怖かった」と佐藤せい子さん。もう一人の女性Aさんは「娘のおびえが激しく、しばらくタクシーで通学させた」と言います。
ドコモシステムズの嘉村英二社員や創価大の副学生課長らが別件の通話記録盗み出しで逮捕されたことは、新聞や週刊誌で知っていました。
警察はそれを確認したうえで「あなたの記録も調べられている」と通告。Aさんは副課長の名前も聞かされています。彼女の記録を盗まれたのは(昨年)三月七日で、同日から約二か月前までの記録がそれでわかることも警察で聞きました。
Aさん親子はそれぞれ、深川署で事情聴取に応じました。Aさんは問われるままに、創価学会入退会や結婚と離婚のいきさつから学会による仕打ちまで克明に説明。四時間余の調べの後、続きは明日A宅で、となりました。
翌日、刑事の様子が急変していました。「状況が変わった」などとし、前日の調書に押印させ、世間話だけで引き揚げました。「調書はほぼ私の言った通りにまとめられていた」と言います。
佐藤さんも同じ。前日の電話では「捜査に協力してくれるか」と熱心だったのに、深川署では「刑事事件にならない」。佐藤さんがアクセスされたのは料金システムではなく電話の持ち主などを調べる顧客システムで、これは犯罪にならないという理由でした。
しかしNTTドコモ広報部の説明でも、両システムは互いに独立した仕組み。取り違える可能性はまずありえません。
警察はその後も、Aさんに創価大卒業名簿など資料提供の協力を求めています。佐藤さんやAさん以外にも多数のデータが引き出されているとも言われています。にもかかわらず、立件したのは創価大剣道部長の“浮気調査”にかかわる事件だけ。
それにしても−−
「私と娘のあの詳細な調書はどうなったのだろう」。Aさんの疑問は深まるばかりです。
佐藤さんは言います。
「宗教上の感情からではない。国民として、こんな人権侵害を許すことはできない」
そしてAさん。
「告発人になればどんな仕打ちを受けるか。恐ろしく、ちゅうちょもした。でも泣き寝入りばかりでは本当の解決はできないと思ったのです」
(おわり)