2003年5月17日(土)「しんぶん赤旗」
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熊本県相良村に計画されている川辺川ダムから水を引く国営川辺川土地改良事業をめぐり、同事業の事実上の中止を求めている川辺川利水訴訟の控訴審判決が十六日、福岡高裁(小林克已裁判長)でおこなわれました。小林裁判長は、同事業推進に必要な法が求める農家の三分の二以上の同意はないとして、農民側完全勝訴の逆転判決を下しました。
同事業は、人吉市など一市二町四村にまたがる畑地かんがい、区画整理、農地造成をしようという計画。八四年に農水大臣が事業計画を決定し、九四年に縮小する変更計画が公示されました。地元農民から「水は足りている」「高い水代は農家をつぶす」との異議申し立てが相次ぎましたが、農水大臣はこれを棄却。九六年、農民八百六十六人が熊本地裁に提訴しました。
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裁判は、計画変更の際に国側が土地改良法に従って対象農家の三分の二以上の同意が適法に集められたかが最大の争点になりました。
一審の熊本地裁は、三分の二以上の同意があるとして農民の請求を退けたため、農民らが控訴。控訴審では、同意書を修正液などで消して書きかえるなどの改ざんも明らかになりました。
高裁判決は、対象農家四千百六十一人中同意者は二千七百三十二人で、三分の二以上の同意という要件を充足しないので違法と断じました。
判決後、原告団・弁護団は「農水大臣は、本判決を厳粛に受け止め、本件土地改良事業を白紙撤回すべき。上告を断念すること」を求める声明を出しました。
利水事業計画の破たんによって、無駄で環境破壊の川辺川ダム事業そのものの見直し・中止が避けられなくなりました。
一、本日、福岡高裁で、国営川辺川利水事業について、国の計画は違法という、農民勝訴の判決が下された。法律で定められた農民の同意を得ずに事業を強行することは、農家を裏切るものであり、決して許されないことが、司法の場で明らかにされた。
国は、上告することなく、違法な利水事業をただちに中止すべきである。
一、利水事業計画の建設の目的は破たんした。無駄で環境破壊の川辺川ダム事業そのものを中止すべきである。
一、国は、自治体と住民の意向を尊重して、ダムによらない川辺川の治水対策と、地域の農業、経済の発展のために力をつくすよう、強く求める。