2003年5月15日(木)「しんぶん赤旗」
全員有罪で決着したはずの事件が再び燃え始めました(一面所報)。創価大グループによる携帯電話通話記録盗み出しは元学会員らの告発で、対立団体にたいする組織的犯行の疑いに発展してきました。事件の背後に隠されてきたものとは…。
異様な光景でした。昨年十一月五日、東京地裁四一九号法廷。被告席には創価大の学生課副課長と剣道部監督(元警視庁巡査部長)、同大学出身でドコモシステムズの嘉村英二社員(以下、肩書は事件当時)。監督の女友達の異性関係を探るため、共謀して女性の通話記録を不正入手した、という事件でした。
通信の秘密侵害という重大な事件とはいえ、いわば“浮気調査”という単純な動機のこの事件に、創価学会が異様な対応を示しました。
その一つは、こんな裁判の傍聴に学会関係者が詰めかけたこと。抽選で傍聴券を手に入れた彼らは、開廷するや真剣にメモをとり始めました。手にしているのは同じ大学ノート。
もう一つは十一人もの大弁護団。しかも創価学会副会長である福島啓充、松村光晃、築地伸之氏ら全員が学会系弁護士。創価学会あげての対策という感のある布陣でした。
ところが、被告も弁護団も、犯罪事実については全く争わない。ひたすら「反省している」「私的で一過性の事件だ」と繰り返しました。
事件をこれ以上拡大させない。その意図が露骨に見える法廷戦術。それは逆に「何かを隠している」という疑いを深めることにもなりました。
起訴状朗読から論告求刑、即日の判決言い渡しまでわずか二時間余り。全員有罪(執行猶予つき)が決まると、被告と傍聴者が歩み寄り、手を取り合い、“感涙”の場面も。そこには隠しようのない“安ど感”すら漂っていました。
事件発覚後ドコモシステムズを解職された嘉村被告はすでに再就職先が決まっていました。弁護団のあっせんです。
そこまでして、そして三人の有罪を盾にして守らなければならなかったもの。その一端が今回の元学会員らの告発で水面に姿を見せ始めました。――“浮気調査”の不正は余罪、本体はより組織的で根の深い犯罪ではないかという疑惑です。
告発状は指摘します。
「本件は、たんに電気通信事業法等に違反するだけでなく、本質的には、憲法の保障する信教の自由、通信の秘密を侵害する悪質な犯罪である」(つづく)