日本共産党

2003年5月15日(木)「しんぶん赤旗」

「平和守りたい」願い裏切る

有事「修正」案 審議わずか2時間半


 十四日の衆院有事法制特別委員会で採決が強行された有事三法案は、前夜の与党と民主党の「修正」合意をうけて、この日提出されたばかりのものです。委員会の正式な議題となったのは、この日昼の委員会から。アジアと日本の平和を脅かす重大法案にもかかわらず、審議開始から採決まで、わずか二時間半でした。

民主党 「慎重」の立場どこへ

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木島日出夫議員の質問を聞く人たち=14日、衆院有事法制特別委員会

 こんなわずかな審議時間しか保障されなかった与党・民主党「修正」案とは何だったのか。

骨格に触れず

 「何も問題ない」。有事法案にかかわってきた政府高官は、同「修正」案の中身をこう評価しました。重大な問題を持つ法案の骨格に何一つ手を触れていない「修正」だから、有事法案作成作業を進めてきた政府にとって、何の「痛み」もないのです。

 政府・与党案は、海外での自衛隊の武力行使に道を開き、自治体、民間企業・機関など日本がまるごと強制動員されるものです。イラク戦争のような米国の先制攻撃の戦争でも発動されます。この重大な危険は、日本共産党だけでなく、「修正」合意した当の民主党議員の国会質問に対する政府答弁でも明らかになっています。しかし、与党・民主党案でも、この点で何の歯止めもありません。

 政府は、米国がアジア太平洋地域で軍事介入し、日本が周辺事態法にもとづく戦闘地域外の兵たん支援を始めることになる「周辺事態」でも法案発動の危険があることを認めています。与党・民主党案は、この点でも何の「修正」もありません。マスコミからも「政府の判断一つで有事と認定し、より踏み込んだ米軍支援が可能となり、自衛隊の活動範囲を拡大させる余地を残している」「このままでは自衛隊の行動に“お墨付き”を与えるだけの法律になりかねない」(「東京」十四日付)との指摘もあがっています。

米国に手土産

 政府・与党が、この重大法案の衆院通過を急ぐのは「来週になったら、総理が(米国、中東への外遊で)いなくなってしまう」(自民党の有力理事)からです。首相の外遊日程に合わせるために、「修正」協議を国民の目の届かぬ国会の舞台外で急ぎ、国民がその全ぼうを知らないうちに、議論を断ち切り、採決を強行する――。まるで、ブッシュ米大統領への手土産であり、ここには、「さきに成立ありき」の発想しかありません。

 この点で民主党の責任も重大です。昨年七月の見解で同党は「有事に備える法制は、国民に開かれ、十分な議論を尽くし、理解を得た上で整備されるべき」と言明していました。「慎重審議」の立場を示していたのです。また野党間では、徹底審議を求めることで合意していました。ところが、「修正」協議がまとまると、菅直人代表は「国民の前でこういう議論ができたことは意味がある」(十四日)と評価。しかし、その「修正」案を「国民の前」で審議した時間は、たった二時間。国民の声を聞く公聴会すら開かず、どこに「議論を尽くした」といえるものがあるでしょう。

 この重大法案を、このような形で道理なき採決強行をはかった勢力への批判は避けられません。(田中一郎記者)


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