2003年5月15日(木)「しんぶん赤旗」
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十四日の衆院有事法制特別委員会で、日本共産党の木島日出夫議員は、武力攻撃事態法案が定める米軍への支援措置について、米国が海外でおこす戦争で、自衛隊が制約なく支援をおこなう危険があると追及しました。
木島氏はまず、米軍への支援措置の発動条件についてただしました。
法案では、「わが国に対する外部からの武力攻撃」が「予測」される事態が、その発動条件としては「時間的に最も早い」(木島氏)ものになっています。
しかも、この「わが国」について政府は、日本の領土・領空・領海だけに限定されておらず、「公海上のわが国の艦船にたいする組織的・計画的な武力攻撃も含む」としてきました。
木島氏の質問にたいし、小泉純一郎首相はこのことを認め、「公海上」の地理的限定も「ありません」と答弁しました。
木島議員 そうすると、武力攻撃事態法を発動できる条件のなかで、最も時間的に早く、かつ地理的にわが国領域から最も遠い場合は、「わが国領土からはるか離れた公海上で行動する、わが国艦船、自衛艦船にたいして、組織的・計画的な武力攻撃が予測される事態」ということに法律上なる。
石破茂防衛庁長官 理屈から言えばそういうことはありうる。
つまり、公海上のどこであっても、そこに展開する自衛隊艦船への組織的・計画的な攻撃が「予測」されれば、それに対処するため、米軍への支援措置が発動されることになるのです。
つづいて木島氏は、こうした「予測」事態で、どのような米軍支援をすることが可能になるのかただしました。
木島氏は、海外で戦争をおこなっている米軍への支援措置を定めた周辺事態法では、(1)米軍支援ができるのは戦闘行為がおこなわれていない日本周辺の公海まで(2)戦闘行為の発生が予想される場合は支援措置を休止・中断する(3)武器・弾薬の提供はできない――という三つの「限定」があることを指摘。周辺事態法で、こうした「限定」をつけたのは、憲法第九条で集団的自衛権は行使できないという「政府なりの制約」があったことを、同法審議の際の政府答弁も引いて示しました。
ところが、武力攻撃事態法案にはこうした「限定」について明文の規定はなく、政府も今後の法整備のなかで検討していくというだけで明確な答弁をしていません。
木島 (「周辺事態」と重なり合う)「予測」事態での米軍支援措置で、これまでの憲法九条の集団的自衛権に関する憲法解釈を変更するのか、周辺事態法と同様の限定をつけるのか。どちらなのか。
小泉純一郎首相 いずれの法制にもとづいておこなわれる今後の措置も、憲法の範囲内でおこなわれることは当然であると考えています。
首相は、「限定」をつけるとは明言しませんでした。しかも、石破防衛庁長官は、「予測」事態は「周辺事態とはおのずから異なった局面だ」と、周辺事態法とは違った内容になることを示唆しました。
木島氏は「憲法九条との関係で支援できるかどうか答弁しないところに政府の最大のごまかしがある」「このままでは、憲法適合性の審査をしないまま委員会審議を閉じることになる」と強調しました。
木島氏は最後に、「与党三党・民主党の共同修正案の中にも、これまでの政府答弁でも、いまだ何ひとつ、こうした危ぐを解消する担保は取れていない」と批判。「米国がおこなう戦争に、自衛隊が武力行使をもって参戦することができる、地方自治体はじめ民間企業や国民を罰則で強制的に協力させる憲法違反の有事関連三法案に断固反対し、大事な部分が審議を尽くされないまま、採決を強行することに断固抗議する」と結びました。