日本共産党

2003年5月14日(水)「しんぶん赤旗」

有事法案

民主党

自らの主張反故(ほご)にして
どこが「画期的」なのか


 自民、公明など与党三党と民主党は、有事法制にたいする国民のさまざまな疑問や懸念、反対の声にまともに耳を傾けることもなく、法案の成立を最優先に、「修正」合意にいたりました。

 民主党の菅直人代表は、小泉純一郎首相との「修正」合意の会談後、「大変いい結果だった」「国民のみなさんが心配している問題で修正できた」「日本の政治のなかでは一つの画期的な出来事」などと、手放しで喜びました。

 しかし、今回の「修正」合意は、国会審議で明らかになった法案の危険な本質にてらしても、これまでの民主党の主張にてらしても、自画自賛できるものではありません。

 同党が「非常に進歩した」(岡田克也幹事長)としてあげた、「基本的人権」を「最大限に尊重」するという「修正」も、戦争のために「日本国憲法の保障する国民の自由と権利」に「制約が加えられる」とした、憲法じゅうりんの法体系そのものを変えるわけではありません。国民の「心配」はけっしてなくならないのです。

危険な本質浮き彫りに

 これまでの国会審議で浮き彫りになった法案の危険な本質とは、いったい何だったのか。

 それは、▽米国の介入戦争で、米軍を支援するため、海外に展開する自衛隊が相手国から攻撃を受ければ、武力で反撃し、応戦する▽そのとき、有事法制が発動され、米国の戦争に自治体や民間企業、国民を強制動員する戦時体制がしかれる▽それが、イラク戦争のような、国連憲章違反の先制攻撃であっても参戦する−ということでした。

 民主党も昨年七月には、「有事関連3法案をめぐる問題点」という見解をだし、法案には「重大な欠陥がある」として、「政府の恣意(しい)的な判断によってわが国を武力紛争に巻き込む」ことへの「懸念」を表明。「政府は、有事法制に対する姿勢・考え方を抜本的に改め」、法案の「出し直し」、つまり、いったん廃案にすることまで要求していたのです。

 同党は、今回の「修正」案の提出にあたっては、「仮にわが国領域から遠く離れた場所(たとえば地球の裏側)において攻撃が発生した場合、これを(有事法制が発動する)武力攻撃事態(武力攻撃予測事態)と認定することは、わが国の国是である専守防衛の観点から問題が生じかねない」とし、「国会答弁等で確認」するともしていました。

 ところが、九日の衆院特別委員会で同党議員の質問にたいし、政府は、インド洋やペルシャ湾で自衛隊が攻撃を受けても、「武力攻撃事態」と認定する、と答弁。逆に「専守防衛の原則に真っ向から反する」(質問した同党議員)ことがいっそう明らかになったのです。

この大問題を見過ごすのか

 にもかかわらず、民主党は、この大問題をやり過ごすのでしょうか。

 民主党の「修正」案提出者である前原誠司議員は、九日の衆院特別委で、有事法制は、米国が先制攻撃にのりだしたときにも発動されることを公然と認めました。しかし、米国のイラク戦争と先制攻撃戦略を「国連憲章など国際法の原則に違反する」として反対したのは民主党でした。

 こうした法案の危険な本質をいっさい変えない「修正」合意にもとづいて、与党と民主党がこのまま成立に突き進むことは、アジアと日本の未来に重大な禍根を残すことになり、けっして認めるわけにはいきません。(榎本好孝記者)


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