2003年5月13日(火)「しんぶん赤旗」
整骨院・接骨院に適正な保険請求を指導する旧厚生省の通知が、業界団体の意を受けた木村義雄衆院議員(現・厚生労働副大臣)の圧力によって骨抜きにされた疑惑は、厚労副大臣の資格にかかわる大問題です。
整骨院・接骨院でねんざや打撲などを手当てする人は「柔道整復師」と呼ばれ、医師への診療報酬にあたる「療養費」を国に保険請求できます。
負傷個所が多いほど請求金額も多くなる仕組みで、当時、「三部位以上を施術した」とする請求が半数を占めていました。保険の申請書に、支払いの適否を判断できない例が目立つとして九三年以降、会計検査院や医療保険審議会が旧厚生省に改善を求めました。
|
これを受けて同省は九七年、三カ所以上を施術した場合、「××してひねった」などケガの原因を詳しく書くよう求める通知案を作成しました。
これにかかわったのが木村副大臣です。同通知案の内容について「事務が煩雑になる」と、全国組織の日本柔道整復師連盟はじめ各地の団体が、厚生事務次官などを務めた木村議員ら厚生関係議員に陳情しました。
民主党の山井和則衆院議員が九日の厚生労働委員会で「旧厚生省の内部文書」として示した資料によると、同年十月二十四日、厚生省の担当者は「(業界団体と)よく相談しながら進めさせてもらいたい」と理解を求めました。木村氏は「駄目だ。役人の言うことは信用できない」と反対。「この案を押し通すと社団(日本柔道整復師会)は分裂するぞ」「とにかくよろしく頼む。党として社団を分裂させるわけにはいかない」とのべ、通知案の変更を求めていたことが明らかになりました。
同年十二月初め、負傷原因の記載を指示した項目は通知案からバッサリ削られました。
これにたいして、木村副大臣は「身に覚えがない」、坂口力厚労相は「まったくこういう文書はない」と全面否定しました。しかし、疑惑を裏付ける資料だけに、“なかった”であいまいにすることはできません。
さらに、適正化指導の見送りが決まってから、業界団体などが木村氏側に資金提供していたことが明らかになりました。
九七年十二月には香川県接骨師会政治連盟が五十万円を献金。九八年―〇〇年には、全国組織の日本柔道整復師連盟など四団体からパーティー券購入を含めて計三百七十五万円の資金提供がおこなわれています。
香川県接骨師会の山田喜通会長は「指導の見送りで働いてもらったお礼の献金だ」と認めています(「日経」四月三十日付)。
業界団体からの資金提供は、指導見送りの九七年から総選挙があった二〇〇〇年にかけて集中し、以後はぱったり途絶えています。二〇〇〇年の日本柔道整復師連盟の三百万円の献金は、総選挙投票日直前の六月二十日です。
日本共産党の小沢和秋衆院議員は七日の厚生労働委員会で「ある時期だけ献金が集中していれば“貢献”にたいする見返り、指導を見送らせたお礼と考えるのが自然だ」と指摘しました。
まさに「厚生労働行政をゆがめることになることを示した疑惑」(小沢氏)ですが、自民、公明など与党は九日、木村氏にかかわる資料提出と集中審議、辞任を求める野党側の要求を拒否したうえ、単独で労働者派遣法改悪案採決の前提となる参考人招致を議決する暴挙にでました。十四日にこの問題の集中審議がおこなわれますが、真相の徹底解明が求められます。(深山直人記者)