日本共産党

2003年5月11日(日)「しんぶん赤旗」

論戦ピックアップ

個人情報保護法案 決定的な欠陥

参院本会議 吉川議員の質問


 九日の参院本会議で行われた個人情報保護法案の質疑で、日本共産党の吉川春子議員は政府案の決定的な欠陥を批判しました。該当する政府答弁とあわせて紹介します。


主務大臣が恣意的判断の危険

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質問にたつ吉川議員。後方は小泉首相=9日、参院本会議

 吉川議員 政府案は個人情報取扱事業者を監督する主務大臣制をとっている。個人情報を扱うNPOや市民団体、労働組合も監督対象となるが、介入、規制の懸念がないと言い切れるか。

 小泉首相 NPO、市民団体、労組を区分することは合理的でない。利用目的の範囲内で通常の事業活動を行うのであれば、主務大臣が関与する恐れはない。

 吉川 報道の判断も主務大臣に委ねられる。恣意(しい)的判断が行われる危険がある。

 首相 まぎらわしい場合は「報道目的を一部でも含むか否か」を主務大臣が判断するが、容易な判断だ。報道の定義も法案に明記しており、恣意的になることはない。

行政から独立した第三者機関を

 吉川 行政から独立した第三者機関を設置すべきだ。

 首相 地方組織を含む大規模な行政組織が必要となり、事業所管大臣との間に競合関係が生ずるなど問題が多い。

 吉川 法案では自己情報の開示や訂正、利用停止を要求できるが「業務の適正な実施に著しい支障を及ぼす恐れがある場合」は開示の例外としている。実効性が担保できない。

 細田IT担当相 個人情報の保護と利用の適正なバランスを図るためであり、範囲も限定されている。

 吉川 個人の名誉、信用、秘密にかかわるセンシティブ情報の収集は原則禁止すべきだ。

 首相 何がセンシティブ情報かを類型的に定義することは困難だ。

 吉川 現在、住基台帳の氏名、年齢、住所、性別の四情報と戸籍の閲覧が認められているが、「四情報も非公開に」が多くの国民の声だ。例えばドメスティックバイオレンスで夫から逃げ、居所を知られたくない女性にとって、氏名、住所の秘匿は不可欠だ。

 片山総務相 市町村長は不当な目的によることが明らかなとき、または知りえた事項を不当な目的に使用される恐れがあること、その他の当該請求を拒むに足りる相当の理由があると認めるときは拒める。市町村長の適切な判断を期待したい。

行政の目的外利用が可能に

 吉川 行政機関の保有する個人情報保護法案では罰則規定が新設されたが、罰則が適用されるのは「自己又は第三者の利益」「不正」を目的に提供した場合、または職権を乱用した個人の秘密の収集や情報の盗用などに限られている。目的を問わず罰則が適用されないと実効性に欠ける。

 総務相 職務の用のときも罰則の対象にしろという趣旨だろうが、刑罰というのは何でもいいとはいかない。職務の用に供する場合は、行きすぎがあっても懲戒処分で対応すればよい。

自衛官募集名簿ただちにやめよ

 吉川 防衛庁は自衛隊入隊適齢者名簿を自治体から提供させ、この情報が警察に提供されて思想、信条を含めた調査に利用されていた。ただちにやめるべきだ。

 首相 自衛隊は自衛隊法にもとづき、地方自治体または警察の協力を得ている。個人情報の取り扱いについてはご指摘のような誤解を招くことがないよう、法令にもとづき、かつ慎重に行うよう努める。

 吉川 法案では、一年以内に消去される個人情報ファイルは総務大臣への事前通知義務がない。自衛官募集名簿等も存在すら国民に知らされず、開示や停止要求もできないことになる。

 総務相 全部義務化すると膨大となり、行政機関に過重な負担になるし、ただちに実効があるわけでもない。私には所管大臣として厳重にチェックしていく責任があり、今後とも十分検討させていただく。

 吉川 政府案では「相当な理由」があれば行政による個人情報の目的外利用もできるとなっているが、きわめてあいまいだ。第三者機関に諮問し、客観的立場からの検討を経て行うべきだ。

 首相 行政機関に適法でない個人情報の目的外利用がある場合は利用停止を請求でき、行政機関の決定に不服があるときは情報公開、個人情報保護審査会において第三者的な判断がなされるしくみを設けている。第三者機関への諮問は行政の過大な負担や国民への行政の遅延をもたらす。


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